(自己紹介⑪から続く)
さて、新卒で入社した会社のグループ企業に採用された私は、営業をやりたいと希望しました。
しかし、あっさりと却下されました。当時その会社は上場を目指していました。しかし、社内に法律のことが分かる人間が不足していたので、法務として採用してもらったのです。
ところが、私が採用されてまもなく、親会社の方針が変わり、上場しないことになりました。上場がなしになると、そのために採用された私の仕事はなくなってしまいます。
同時期にやはり上場のために経理に中途採用された人は、ほどなく退職していきました。
私はその時には退職する気は全くありませんでした。AじいさんやO君のおかげでやっと安定した生活を手に入れることができたのです。
しかし、仕事がないのは困りました。
そこで、目をつけたのが「契約」です。
企業法務の主な仕事に「契約検討」があります。営業がお客様と締結する契約を、さまざまな側面から検討し、ときにはお客様との交渉に同席し、できるだけ自社に有利な条件で締結するのが仕事です。
その会社だけでなく、当時はまだ相当数の会社で法務の重要性が理解されず、お客様が示した条件をろくに検討することもなく、そのまま契約締結することがしばしば行われていました。
お客様は自分に有利な条件を示します。こちらは不利な条件で締結することになります。
なにもなければ何の問題もありません。しかし、何か問題が起こったときは大変です。
例えば、契約書に良くある規定に瑕疵担保責任という条項があります。お客様に納めた物に欠陥があった場合、一定期間は無償で修理するという条項です。
企業間の契約では、普通この瑕疵担保責任は納入から1年や半年間だけ負うケースが大半です。
ところが、中には5年間この責任を負うこと、という条件を出してくるお客様もいたりします。
このような契約をそのまま結んでしまい、4年後に欠陥が明らかになったりしたら大変なことになります。
しかしながら当時はそのような契約を中身を十分に検討することなく、仕事欲しさで締結してしまうということがあったのです。
私が入社した会社も一応検討はされていましたが、十分とは言えませんでした。そして、営業経験のある私には契約はとっつきやすく、身近なものでした。
「これだ・・・。」
私は契約を柱にして自分の法務としてのキヤリアを組みたてることにし、上司にもお願いをしました。
営業経験と自分が勉強した法律が交差する分野なら、自分の強みとできるのではないか、と考えたのです。
(次回に続く)