新型コロナ禍で、暇すぎる妻が書道教室を始めた話 | 『りょう太のぼうけん』〜イクメンではない子育て〜

新型コロナ禍で、暇すぎる妻が書道教室を始めた話

妻は、いわゆる“バリキャリ”に分類されると思います。新卒から同じ会社で、あくせく(とまではいかないまでも)働き続けています。

 

そんな妻が、昨年は大きな挫折感を“一瞬だけ”抱いていたようです。

 

原因は、世界を震撼させた感染症です。妻が所属する企業は、大手…とまではいかずとも、日本で絶対につぶれない会社1,000選くらいにはランクインしそうな会社のグループ子会社です。大企業とは言えないし、誰も会社名を聞いたことがなくても、絶対に必要な企業って、たくさんあるんです。そんな会社の子会社に務めています。

 

そのため、妻の(部署の)仕事がなくなっても、この1年半、給料が減らされることもありませんでした。特に、初めて東京に緊急事態宣言が発令されたときからは、ほとんど出勤しなかった、にも関わらずです……。

 

ぼくは自営業なので「サラリーマン……恐るべし」と思いました。こういう時は、うらやましいな。特に、名だたる企業がリストラやら賃金カットやらしているのに…うちの妻は、有給かつ有閑なサラリーマン。

 

ただ、動き続けないと弱ってしまうタチの妻にとっては、良いことばかりではありませんでした。特にはじめのうちは、「ヤバい…仕事がなくなったら、どうしよう…」って心配していたし、感染症の広がりとともに、未来に(仕事面での)希望を見いだせずに、転職を考えていました。

 

そんな妻を横目で見ながら、ぼくはといえば……

 

「え? 会社へも行かずに、仕事もせずに、それで給料がもらえるなんて、サイコーじゃないか!」

 

って、お気楽に、うらやましがっていました。まさにぼくが理想とする生き方です。

 

妻「まあね…そういうことだよね。ジムでも通おうかな。いま月に数千円で入会できるらしいし」

 

ぼく「いいねそれ。ただ…いまジムに通う人たちって、ぼくらよりも意識低い系が多そうだから、気をつけてよ」

 

妻「そうなんだよねぇ。(近所の)◯◯でも、毎月感染者が出ているらしいし…。でも、時間があるからさぁ。それよりも、前から言ってた、書道教室を始めようと思っているよ」

 

書道教室の話は、数年前から言いはじめていました。そして、もう習字教室を開く準備を始めたと言います。教室を開くための、セミナーへ通うことにしたと……いやぁ、いつもボーッとしているぼくとは、正反対の妻。いつもながら動きが早い。

 

それが、たしか緊急事態宣言が発令されてから、すぐのことだったと思います。それとも、一回目が開けてからだったかな…。そんなときに、先生育成のためとはいえ、セミナーを開催していたっていうのも、いま考えるとすごいな…。

 

そして、昨年の秋頃に、彼女は習字教室を開きました。

 

本当は、近所に場所を借りる予定だったのですが、金銭面などで折り合いがつかずに、自宅で開くことにしました。

 

まずは練習として、息子の りょう太……それに、一番仲の良いママ友で、りょう太と同じクラスの女の子を、生徒として教え始めました。そのママ友も「教わりたい」と言っていましたが、「大人に教えるほどではないから…。でも、一緒に来て書くのならいいよ」ということで、妻+3人が、ほぼ毎週末に集まって習字をしていました。

 

ぼくはといえば、みんなが来ている間は、近所のカフェで時間をつぶしました。平日に仕事をしないで銭湯や博物館へ行く時のように、週末に家族と過ごさずに一人でいられるって……不謹慎かもしれませんが、とてもうれしいです。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

そして今は、噂が噂を呼び…ではないですけど、息子を合わせて生徒が5人になりました。たまたまなのですが、一人を除き、息子の同級生(一人は同級生のお姉ちゃん)。

 

息子以外は全員、女の子。

 

自分以外は女の子ということで、習字教室の様子をぼくが聞くと…

 

「おんなはねぇ、しゃべってばっかりなんだよ。ぜんっぜん しゅうじに しゅうちゅうしないの」

 

などと言っています。男の子の友だちにも入ってもらいたいと言い出し、妻に「おとこも いれてよ!」と抗議。

 

つま「いいよ、りょう太が だれか さそってくればいいじゃん」

 

おそらく妻は、軽い気持ちで、そう言ったはずです。なんといっても、今は妻の趣味のような感じの書道教室です。そんなに生徒が増えても困る……狭い自宅だしね。

 

 そうしたら、予想に反して、りょう太が 一人の友だちへ猛烈な勧誘を始めたらしいのです。

 

保育園も同じで、小学校も学童も同じ男の子。

 

「うみくんが、しゅうじ やっても いいって いってたよ」

 

ある日、りょう太が言いました。

 

「でも、うみくんママは やってもいいって言ったの?」

 

そう妻が言うと、りょう太は「こんど うみくんママに きいてみる」

 

後日、りょう太が うみくんに 改めて聞いたそうです。そうして…

 

「うみくんママに でんわできいたら、いまはむりだけど、こんど はいるかもしれない ってさ」

 

え? 本当に聞いたのか?

 

土曜日に学童というか児童館で、うみくんと一緒に遊んでいたらしいのです。うみくんは 子ども用の電話を持っているので、その電話で りょう太が うみくんママに直談判したと言います。

 

「すごいな りょう太が、直接 話したの?」

 

りょう太は、超絶オクテだと思っていたので、そんなことできないと思っていました。

 

「うん、はなしたよ」

 

べつに大したことしてないよ、くらいな感じで りょう太は答えます。ふむ…子どものすることって、分からないものだなぁ。

 

うみくんママと妻は仲良しなので、その日のうちに、LINEでやり取りして「押し売りみたいなことしてごめんね。こうこうこうだから、気にしないでね」と、軽く謝っておいたとのこと。

 

まぁいつかは 男の子も入るかもしれません(妻が教室を続けていれば…ですけどね)。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

この書道教室ですが……とくに儲かるわけではありません。やはり大がかりに生徒を募って、教室を運営しないと、難しいんでしょうね。教室というより保育施設のような雰囲気。ただ、妻もこれで儲けようとしているわけではありません(いちおう野望があり、今はその前の前の前の準備段階といったところです)。

 

もちろん無駄や徒労にはならず、良いこともたくさんあります。

 

まずは、妻の活力の一つになっていること。

 

自分で仕事を作る…自営するというのが、妻の長年の希望だったので、その足掛かりにはなっているはずです。妻のことなので、今後は大ばけするかもしれません……途中で飽きる可能性も大ですけど(笑)。

 

りょう太が習字を続けていることも、大きなメリットです。

 

当初も今も「ならってあげても いいよ」という、何様? スタンスですが、それでも毎週 筆を持ち、書を書くというのは良いことです。じょじょに筆独特の書き方にも慣れてきたようで……そろそろぼくよりも上手になりそうです。進研ゼミ小学講座のチャレンジタッチとの相乗効果で、ひらがなや漢字も どんどん覚えていきます。

 

もう一つのメリットとして、前述した通り、ぼくの自由時間が増えたことです。書道教室の数時間は、カフェで休憩したり、博物館へ行ったりして、ゆったりとした時間を過ごせます。

 

 家族みんなに良い効果のある書道教室……無理のない範囲で、楽しめる範囲で、続けてもらえればと思っています。