太平洋戦争の敗戦後、日本はGHQ(連合国軍総司令部)の占領下に入りました。その占領政策の中心にあったのが、「Reorientation(再方向付け)」という理念です。これは、単なる政治改革や軍隊の解体ではなく、日本人の価値観そのものを民主主義へと転換するという、きわめて大きな目標でした。
■ Reorientation(リオリエンテーション)とは何か
GHQは、日本が再び軍国主義へ戻らないためには、制度だけでなく国民の精神構造を変える必要があると考えました。そのために掲げられた”総合理念”が Reorientation(再方向付け) です。Reorientationが目指したのは、
- 天皇中心の国家観から、個人中心の価値観へ
- 集団主義から個人主義へ
- 忠誠・犠牲の美徳から、自由・平和の価値へ
- 国家への服従から、民主主義的判断へ
という、国民の行動原理そのものの転換でした。この理念を実現するために、教育改革、憲法改正、警察制度改革、財閥解体などが総合的に進められました。
■ WGIPは、Reorientationのなかの“情報政策”だった
Reorientationが理念だとすれば、WGIP(War Guilt Information Program)は、その理念を国民に浸透させるための情報政策でした。いわば、占領軍の実働部門だったのです。
WGIPの目的は明確です。「日本は侵略国家であり、戦争責任を負う」という認識を国民に定着させることを狙っていました。つまり、日本人に罪悪感を植え付けることを目的としていたのです。これは、軍国主義の再発を防ぐための“心理的安全装置”として設計され、最も重要な政策でありました。
まずメディアへの指導として次のような事が実行されました。
- 東京裁判の報道を強調
- 軍部の責任を強調
- 軍国主義的言説の禁止
続いて教科書の書き換えが行われました。軍国主義的記述が削除され、平和・民主主義が強調されました。
そして、映画・出版物の検閲が行われました。国家主義的内容の作品は禁止、一方で民主主義を称賛する作品は奨励されました。
これらはすべて、Reorientation(リオリエンテーション) の理念を国民に浸透させるための“実務”でした。このアメリカの作戦は見事に成功しました。以下、第4篇(最終篇)に続きます。
