とてもおもしろいクソ映画を観たので、記録しておきたい。

 勧めていると思われると困るので、タイトルは出さない。

 

 まず冒頭、「宇宙人の秘密」について知っているらしい「博士」を捕まえるシーンからはじまる。

 軍なのか警察なのかわからない、武装した兵士に取り囲まれる博士。

 

 自宅なのか研究所なのかわからない施設から、警戒厳重な基地という体の廃屋に近い建物の地下室に監禁される。

 状況は私の推測にすぎないが、圧倒的な予算不足に起因する説得力の枯渇に突っ込むのは野暮である。

 

 やがて博士から情報を得るために兵士が取り出したのは、「仕組みはわからないが人間に最高の苦痛を与える地獄の拷問マシーン」。

 ラノベのタイトルみたいな機械の登場に、博士と同じくらい不安になる。

 

 画面には、苦悶する博士のベタな演技。

 しばし尺を稼ぐが、それでも口を割らない。

 

 そんなすごい苦痛なのに耐える博士すげーなと白目で眺めていると、つぎに兵士が取り出したのは、なんと……。

 「原理は不明だが開発に百年かかった記憶を吸い出すスーパーマシン」。

 

 …………。

 画面を眺めながら、あんぐりと口を開けた。

 

 

 そういうのをつくりたい監督の情熱、というか情念に、まずは敬意を捧げたい。

 それにしても、スタッフから異論はなかったのかな……。

 

 拷問の意味をスキップするようなチートに、しかしこの博士、なんと耐える。

 どうやら「宇宙からの超絶的な影響」によって、守られているらしい。

 

 ここでようやく、物語の背景が見えてくる。

 宇宙人は人間たちを操るインプラントをこっそりと広めながら、それを暴こうとする人々に冷酷な罰を与える……。

 

 という設定を、ほんのり匂わせられたような気がする。

 が、面倒くさかったのか時間がなかったのか、それ以上の考える努力を放棄したのか、ともかく深掘りはされなかった。

 

 謎は解かれない。

 というより、謎なんて最初からなかった。

 

 

 アメちゃんを口に放り込みながら、私はこの文章を書きはじめていた。

 これ以上、理解するための努力を傾ける意味はあまりなさそう、という判断だ。

 

 頭を空っぽにして見られるアクションやホラー映画、要するに派手な爆発やゴア表現にそれなりの努力が見られるなら、それはそれでいい。

 しかし、SF映画として未知との遭遇を描く「物語」にもかかわらず、POVの残念な映像を切り張りしただけの90分については、どこかで集中力の再配分が必要になる。

 

 そんな文章を書きながら耳をかすめていくセリフも、だいぶ安っぽい。

 「政府は無策だ、国民は絶望の淵に立っている!」「世界に本当の真実を伝えるのだ!」

 

 無理やり社会問題を絡めて、個人的な不平不満を吐き散らしているかのよう。

 本当じゃない真実ってなんだよ……と、もはや突っ込み待ちとしか思えない、錯綜したセリフの数々。

 

 イキッてみたが、すべて空振り。

 ここまで空虚を貫けるのも、逆にすごい。

 

 

 ぼくのかんがえた、さいこうのうちゅう人えいが。

 幼稚園の学芸会ならすばらしいし、中学の同好会なら年相応にがんばっているとは思えるが、大学だとさすがに眉をひそめる者が多いだろう。

 

 そういう品質の映画が、市場に出回っているのを発見したときの驚きと恐怖、そして感動。

 最近あまり書いていなかった映画ブログを、ひさしぶりに書く気にさせてくれた一作は、名作でもブロックバスターでもない、ふしぎな低予算カルトだった。

 

 ラストは、宇宙人の秘密を守る役割を、博士から兵士に移して、宇宙人は危険な観察をつづけている、といった感じ。

 あなたは監視されている、という余計な一文まで添えてエンドロールまで観た自分を、とりあえず褒めてあげたい。

 

 

 ……さて、世はAI映画の時代らしい。

 AIの登場によって、個人でも映画製作が可能になった。

 

 AIなら、こんな脚本の破綻は起こさないだろう。

 もしこの脚本を最新の生成AIに食わせたら、「論理が破綻しています」とエラーを吐くか、もっと辻褄の合った無難なストーリーに修正してくるはずだ。

 

 もちろん私が観たのは旧来型の労働集約型、手作り感満載のAIどころかCGすらないクソ映画だった。

 何人かの人々が集まり、知恵と金を出し合って製作した……のかどうかはわからないが、ともかく複数人で力を合わせてつくりあげた。

 

 それより、ひとりの才能ある個人が、AIを駆使して製作した映画のほうがおもしろい時代がくるのかもしれない。

 すくなくとも見栄えはするだろうし、コストも安上がりだ。

 

 逆に言えばこの手のクソ映画は、これから急激に減っていくような気がする。

 そう思うと、ちょっとだけノスタルジーのようなものを感じた。

 

 AI映画が普及しても、なくならないでほしいものだ。

 この手の「若さゆえの過ち」を感じさせる映画というものは。