地方創生という言葉がある。
 国が音頭を取っているらしいが、正直さほど興味はない。

 ただ個人的に、地域の役に立つことはやりたいと思っている。
 人生も後半を迎えると、自分以外のことを考えるようになるようだ。

 消防団員になったり、狩猟免許をとるのもいい。
 知事もわな猟の免許を取得したらしいが、クマ対策が必要なのは平野部ではなく、私が住むような山の中だ。

 それ以外にできることはあまり多くないが、アイデア出しくらいはできる。
 人生の目標「静かに暮らす」範囲内で、お役に立てればさいわいだ。


 正月のお焚き上げ(どんど焼き)の打ち上げで、ある方が言っていた。
 住民はどんどん減っている、たしかにこのあたりは限界集落に近いが、振興のポテンシャルはある、鍵は「軽井沢だ」と。

 なるほど、軽井沢とつながることで、可能性は大きく広がるだろう。
 全国区のブランドであり、東京24区と呼ばれるほど、上流階級がやってきてアクセスもいい。

 その周辺自治体として、軽井沢ブランドにぶら下がって地方創生。
 ……情けねえ。

 最初のイメージはそんな感じだったが、全否定するつもりはもちろんない。
 ただ自分たちばかり利益を得て、相手に利益がないというのはいかがなものか?

 当の軽井沢もそう思っているのか、われわれとの提携に気が進んでいないのだという。
 じっさい彼らは「避暑地の王様」である一方、われわれはただの周辺自治体だ。

 悪く言えば「寄生虫」……いや、寄生は言いすぎだ。
 しかしそれが片利共生だとしたら、コバンザメのそしりを免れない。

 仄聞したところ、地元の観光機構が磯部温泉を「東軽井沢温泉」と銘打ったらしい。
 近所のゴルフ場にも「東軽井沢」と名づけられている。

 ……いやここは軽井沢じゃねえだろ、と。
 よその地名をコピペするだけで地域振興? まじかよ。


 日々解読している宿場の古文書に、よく追分宿の史料が出てくる。
 上州・坂本宿にとっては明確に「隣国」として登場する、信州・軽井沢。

 もちろん「軽井沢の東」であることは嘘ではないが、そんなことを言ったら群馬県はだいたいそうだ。
 磯部温泉は、軽井沢から宿場でいえば3つも離れている。

 京都を出立して琵琶湖の大津、草津の宿を超えて石部宿までたどりついた旅人に、野洲川の渡しでこう迎えるのか?
 「ようこそ三条大橋へ」。

 いやもうだいぶ進んでんだよ、どこまで京都のフリするつもりだよ、と大阪人じゃなくても突っ込むところだ。
 他人のふんどしで相撲をとるのもたいがいにしてほしい。


 ではどうするか?
 対等とは言わぬまでも、こちらも相応に魅力的になる必要がある。

 さいわい鉄道文化むらはマニア受けしているし、廃線ウォークもそれなりに観光資源になっている。
 もっと「碓氷峠」それじたいを使っていったらどうか。

 有史以前から人々が往来していた碓氷峠。
 この歴史的な場所を利用する手段は、いくらでもありそうだ。

 観光地化するなら、レジャー系のアクティビティがわかりやすい。
 たとえば碓氷峠に、ジップラインやラフティングのルートを開く。

 人々は5キロほどの片峠の「降り」を楽しみ、スキーリフトのように軽井沢にもどってくる。
 スキーリフトはふもとがスタート地点だが、碓氷峠の場合は頂上がスタート地点になる。

 5キロのジップラインは、世界最長になるだろう。
 川筋も整備して、旧道とつなげれば柔軟に運用できる。


 碓氷湖まで降りたら、新交通システム的な乗り物で軽井沢にもどる。
 「横軽」が廃止されて久しく、廃線も観光化されているが、このルートは「輸送」ルートとしても再利用すべきだ。

 せっかく鉄道跡が存在するのだから、低コストな新交通システムでも設定すればいい。
 この「輸送力」は、軽井沢にとっても悪い話ではないはずだ。

 ただでさえボトルネックになりやすい地形、典型的な片峠を貫くライフラインは、とくに災害時などに大きな助けになる。
 ある程度の物量をこなせれば、オンシーズンの観光客利用から、万一の人災、天災までカバーしてくれる。


 軽井沢駅の東側周辺の敷地をもっているのは西武だろうか?
 プリンスホテルグループに企画を持ち込むにしろ、軽井沢という自治体と交渉するにしろ、そう簡単に話が進まないだろうことは言うまでもない。

 私が作家であれば、「軽井沢のセンセ」に話を通しに行ったところだ。
 故・内田康夫氏の最後の作品で、浅見光彦シリーズの掉尾でもある『孤道』の「つづき」を書くというコンテストに応募した程度には、私にも文学的なつながり(?)がある。

 いつものように受賞はしなかったが、スタッフらしき人から電話はきた。
 受賞しない人間に一片の価値もないことは、もちろん理解しているが。

 あとは碓氷峠を舞台にした小説でも広めていく程度が、いまの私にできることだろうか。
 まあ現実的には、明日、消防団の関係で消防署に行ってくることくらいが、地味にやるべきことなのだろう。