毎年何億も買い物をして、ポイント失効しないか不安、というお金持ちがいるらしい。
不動産や投資ならわかるが、通販でそんなに買うものあるのかな、とまず思った。
ECサイトで、あまり高級品を売っているというイメージはないが、まあ探せば出てくる。
使い道があるとして、楽天で使えるポイントの上限は、月に50万までだ。
何億も買えば、たしかに使いきれないポイントがつくかもしれない。
つぎに気になったのは、その買い物の使途である。
私は、とある零細企業の経理を担当している。
零細にありがちなどんぶり勘定はよくないし、そもそも適当な仕事は最近の経理ソフトに怒られる。
うちの会社は決算が7月なので、ぼちぼち忙しくなってくる。
中小企業倒産防止共済の保険積立金や、少額減価償却資産の特例などを使って、合法的な節税に心がけている。
それはともかく、それ以外の日常的な消耗品や備品の買い物について、ふと気になった。
私が個人のアカウントで購入し、領収書で清算している部分についてだ。
これは、すべての会社が日々直面している、経費の問題である。
財務諸表を読めずして、会社は語れない。
まあ零細企業なので、さほどの額でもない。
それでも日々の買い物にかける「賢さ」は重要だ。
すべての買い物は「商人」との戦いであり、負けるわけにはいかない。
できるだけお得なタイミングで買うよう心掛ける。
売り手がコストをかけてでも売ろうとしているタイミング。
それはとりもなおさず、買い手が相対的に多くのポイントを得られるチャンスでもある。
私のアカウントにも、長期間ダイヤモンド会員を保っていられる程度のポイントは加算されている。
そこで気になるのが、経費で落とした買い物についた「ポイント問題」だ。
昨今、ほぼ現金に準じて使用できる、各種ポイント。
マイルやクーポンなどと並んで、この現金に近い「価値」の取り扱いは、経理としても気になるところだ。
管見にして、これらに税金がかかったという話は、あまり聞いたことがない。
原則論ではもちろん、経費に伴うポイントは本来、会社がもらうべきものである。
それを個人がもらうのは「ボーナス」のようなもの、という議論はつねにつきまとう。
しかし結論からいえば現状、税務署は「経費の立て替えで獲得したポイントは、所得とはみなしていない」らしい。
手続きが煩雑になることもあるだろうし、私の場合も含めて、ほとんどの場合は少額だ。
もらっておけばいいのかもしれないが、キッチリしたい経理向きアスペ傾向の私にとっては、違和感が残る。
たとえ小銭でも、いや小銭であらばこそ。
たとえば神社で落ちている小銭を拾ったら、ポケットではなく賽銭箱に入れたくならないだろうか?
私していいものではないポイントが、自身のアカウントについている事実そのものが、あまり気持ちよくない。
それでも日々、ポイントは加算される。
経理として、自分で買って自分で記帳するのが、いちばん確実で効率的だ。
だが会社のカードは持っていないし、持つつもりもない。
わかりやすいのは会社の現金口座に還元することだが、それも気が進まない。
備品などをポイントで購入する場合、ポイント効率が低下する(商人を利する)し、そもそも記帳が厄介になる(マイナス行を追加してポイント利用分を控除)。
ほんとうに少額ならともかく、まとめ買いの発生するタイミングだと、それなりの額になるのでバカにはできない。
あくまで零細企業レベルなので、ちょっとしたお小遣いとして受け取っておいてもいいような気もする、が。
やはり性格的に、ムズムズする。
もらうべき金は断固として、むしり取ってでももらうが、そうでない金はできるだけ持ちたくない、という思想が邪魔をする。
なにも持たずに生まれてきた私は、なにも持たずに死んでいくだろう。
そのためには、たまったポイントの使い道も考えたほうがいいかもしれない。
それでこそ、だれに見られても恥ずかしくない帳簿ができあがる。
税務署にも社長にも、文句は言わせない。
なんなら社長に「こまけえな」とウザがられたりする。
そういう経理に、私はなりたい。