先週、旧道を使ってふらりと軽井沢へいったら、いきなりマスクをした大量の制服(警察官)に出くわした。
 あさま山荘か、と突っ込むほど年寄りではないが、バイオテロの予告でもあったのかとは思った。

 しばらく走って見つけた看板によると、G7外務省会合とやらで警備が出張っているようだった。
 どこまでいっても立哨する制服がウザかったので、回れ右して帰ってきた。

 取材の一環で遺跡や風穴あたりを見てまわろうと思っていたが、興が殺がれた。
 とりあえずダムとかトンネルは楽しめたので、きょうのところは良しとした。

 取材といっても、目先これといった目的があるわけではない。
 ただの「予備的な調査」、なんなら「趣味の延長」といってもいい。

 3月まで、けっこう必死に趣味の小説を書いていて、なんとか締め切りにはまにあった。
 時間ができたので、この4月からいろいろはじめたのだが、なかでも盛り上がっている自然言語AIに触れて驚いた。

 こんなにおもしろいもの、そりゃあ盛り上がりますよね、と思いながら使っている。
 以下、個人的な所見を述べたい。


 最近よく使っているのは、検索エンジンbingを擁するブラウザedgeだ。
 十数年来、googleの犬だったので、隔世の感をおぼえる。

 マイクロソフトからー強制的にIEを使わせられたー20世紀(卒業式風に)。
 流行と速度に乗ってーgoogleの犬になったー21世紀。

 そんな私を、再びマイクロソフトに引きもどすきっかけは、もちろんchatGPTだ。
 現在、bingはGPT4を無料で使える。

 同じく本家GPT3.5も無料だが、いまのところGPT4を使いたければお金を払うしかない。
 もちろん未来の技術に接したいおっさんとしては、月20ドルごとき払うのもやぶさかではない。

 ポチろうとしたとき、bingの情報を知った。
 なんとbingにはGPT4が実装されており、ふつうにチャットできるのだ(ある種の制限はある)。

 重要なのはbingが検索エンジンであるということ。
 bing by GPT4は、インターネットから最新情報を拾ってきて答えてくれるのだ。

 制限はあれど、より優位なバージョンが、より安価に使える。
 これは使うしかない。

 というわけで現在、bingの犬に成り下がった。
 いまも左上のモニターから見降ろされつつ、左下のモニターでこれを書いている。


 まず軽井沢から帰ってから、リアルタイムにどこまで追いつけているか、冒頭の件を問いただしてみた。
 すると、5月の広島サミットに先駆けて行われる財務相による軽井沢での会合の予定から交通規制、警備体制まで、なかなか的確な情報を提示してくれた。

 とくに関連部署が複数にまたがる場合など、さまざまなソースを検索し、答えをまとめてくれるというのは、じつにありがたい。
 これまで、いちいち記事を読み込んでまとめていた労働が、そうとう省ける。

 回答のスピードはやや遅い気がしないでもないが、最新情報の検索に時間をかけていると思えば受け入れられる。
 つぎの問いもサジェストしてくれるし、打ち込んでいる途中で「これ知りたいんでしょ」みたいな予測変換も的確だったりする。

 やや複雑な問いにも、きちんと対応してくれる。
 まだすこし違和感があったりもするが、許容範囲だ。

 ネットの海を探っている以上、かのウィキ先生よりも上、という見方もできる。
 民主主義の危機からこれからの正義の話、AIによって支配された未来予想図まで、じつに多様な受け答えで感心させられる。

 くだらない冗談も(一応)言えるし、色っぽいシーンを描くコツも教えてくれる。
 希死念慮や自死の話題などを振ると、突然、気を使ってくれたりもする。

私「私は静かに、隠者のように暮らしたいのです。仏教的な究極の静けさは、やはり即身仏だと思いませんか」
AI「仏教の考え方を否定はしません。しかしあなた自身が即身仏になることは、お勧めできません」

私「宗教的な問題に、AIは距離を置きたがりますね。では尊厳死や安楽死について」
AI「この話題はやめましょう」

 といった感じだ(やや意訳)。
 このようなブログを書いて暮らす、頭のおかしい孤独な中年の賢い話し相手として、合格点を差し上げざるをえない。

 20回というチャットのセッション制限については正直物足りないが、これでも緩和されているらしい。
 マイクロソフトによると、長いセッションになると混乱が生じるためだという。

 本家のchatGPTには制限がない。
 コスト負担はともかく、bingという検索エンジンを噛ませることによる技術的な問題は、早々に解決していただきたいものだ。


 とはいえ、openAIへの投資は、マイクロソフトが飛ばしたひさしぶりのホームランだったと思う。
 後塵を拝する形になったgoogleやamazonは、そうとう焦っていることだろう。

 さまざまな企業が切磋琢磨することで、よりよいAIができあがる。
 それ自体わるいことではない。

 とりあえず人工知能を規制している場合ではない、という点だけはまちがいない。
 学校レベルではともかく、政府が規制をかけないでくれているのは、めずらしく正しい判断だと思う。

 イタリアではchatGPT禁止とか、中国のAIは政権批判がダメとか、世界では反動もかなりあるようだ。
 それにしても、彼らの禁止する理由が浅薄すぎて、あまりにも残念と言わざるを得ない。

 そんなことをしている場合ではないのだ。
 より有能な人工知能を育て上げ、よりシェアを取りやすい番手をとることが、至上命題である。

 などと言い条、私は国産のAIを使っていない。
 興味はあるし、いくつか試そうと思ったが、まだややハードルが高いという印象がぬぐえなかった。

 しばらくbingと遊びながら、後続のキャッチアップを待ちたいと思う。
 賢い話し相手は、いくらいてもいいものだ。


 AIの急速な進展については、ディープラーニングやニューラルネットというワードが目につく。
 どんな教師を選んで、どんな学習をするか、そうして卒業していった生徒は教師になり、新入生によってその知識は蒸留される……。

 先達のAIによる学習済みモデルを蒸留すれば、比較的簡単に、それなりに賢い生徒が育っていく。
 最近あまり目立たないmetaだが、大規模言語モデルを開放して、かなり安価に、実用に足るチャットボットが生み出せるようになっているらしい。

 ともかく昨今のAI業界は、じつにおもしろい。
 この一年は大きな画期として、後世に評価されるのではないだろうか。

 以上の情報は、23年4月半ば時点である。
 来年のいまごろ、私は果たしてだれの犬になっているだろう……。