成田までいってきた。
 個人ではなく会社の仕事なので、ありがたいことに経費が現金ではいる。

 ひさしぶりに電車に乗って、信越線から京成線の優雅な片道4時間。
 4時間、ということは在来線コースですね、と勘のいい方なら察してくれただろう。

 私はアスペ傾向があるので、最適ルート、最短時間、最安価格などを検索・比較すること自体は、べつに苦ではない。
 経費で落ちるということは当然、有料特急による最短時間コースを優先的に検討した。

 すぐに気づいたのが、在来線でも大差ない、だ。
 ここで取り入れるべき重要な考え方は、移動にかかる「平均速度」という概念だろう。

 玄関を出てから目的地に着くまで、トータルの距離を時間で割る。
 時は金であるとすれば、この数字を比較するのがわかりやすい。

 ふつうに乗換検索をすると、3時間強。
 有料特急を使わないと4時間弱。

 新幹線などの利用で検索すると、平均速度が57km/hくらいになった。
 オール在来線だと、平均速度は46km/h(これは計測したので正確)だ。

 価格が倍なのに、平均速度の差が2割程度。
 これはコスパ的にどうだろう?


 問題になったのは、時刻表だった。
 ロスなく乗り換えられれば、新幹線のほうが当然、速い。

 だが、おおむね5分以内に乗り換えできる在来線と異なり、駅で2~30分も待たされることになると、とたんに怪しくなる。
 ぴったりの時間に快速特急が出ているかや、目的地が成田空港なら成田エクスプレスやスカイライナーも検討にはいるが、目的地はその手前なので引き返さなければならない。

 大阪とか博多とか、遠距離への移動なら、議論の余地なく新幹線だ。
 しかし同じ関東圏内など、ほどほどの距離になると、在来線のほうがよかったりする。


 まず信越線という、本線のくせに1時間に1本のローカル線。
 あるいは安中榛名という、そもそも駅にたどり着くまでに時間もかかるし本数も少ないという秘境駅。

 集合時間も決まっているので、それに合わせなければならない。
 高速鉄道を使えば乗車時間は短くなるが、上述のとおり接続のための移動や乗換の問題が発生する。

 どの程度、時間を短縮できればよしとするか。
 これはすべからく個人の価値観に帰結する。

 オール在来線の片道4時間が、新幹線を使うと2時間になるとしたら、価格が倍になってもその価値があると判断して支払っただろう。
 しかし、45分短縮するために倍額の料金は、ちょっと気が引けた。

 じゃあいいや、というわけで在来線を利用したわけだ。
 オール在来線、これはこれで、いろいろ楽しみ方はある。


 飛行機にしろ新幹線にしろバスにしろ、私は乗客観察に多くを費やす。
 ラッシュ時はラッシュ時、閑散時は閑散時の楽しみ方がある。

 車両中に響きわたる大声で話している知障らしき二人組や、目を大きく見開いてノートをシールでデコっている女子。
 一人分の座席幅からはみ出して横にだれも座ら(れ)ない巨体女や、うつらうつらしたおっさんから肩にヘッドバットをくらう自分。

 一日、いろんなひとを眺めていると飽きない。
 最後には、ローカル線のターミナル駅の利用者2名(うち1名は私)、という結論で終わった。


 残業だったらしいサラリーマンがひとり。
 私がいなかったら、彼の「専用列車」になるところだった。

 もう乗客観察どころではない、運営者のほうが心配だ。
 6両編成で2名の乗客を運ぶって、JR東さん、あんたの収支計算どうなってんの……。

 コロナの初期、フライングホヌ(エアバスA380)の定員520人に乗客が8人だった、などという話を聞いてあきれたことがあるが、これは特殊な事例だ。
 一方、日本の鉄道の衰退については、爾来かなりの危険性が指摘されている。

 JR各社が輸送密度1000以下の路線について、バス転換などを検討しているという。
 データは公開されているので、興味がある方は検索されてみるとおもしろいかもしれない。

 鉄道の時代は終わった、のだろうか。
 やはりこれからは自動運転かな……。