最後の五反田講義に行ってきた。
緊急事態宣言中なのでクルマだ。
これまでは木曜の夕方から講座開始だったが、今回は土曜の昼からというこれまでにない時間割だった。
毎回、方法を変えて行くという自分に課したルール通り、選定した最後のルートはシンプルだ。
松井田妙義から乗り、練馬で降りる(高速道路)。
光が丘から乗り、五反田で降りる(都営地下鉄)。
ちょうど土曜なので30%の休日割引が使えるなと、ちょっと得した気分だったが、いきなりつまずいた。
9月26日まで休日割引の適用除外を延長する、らしい。
というわけで満額払って練馬まで行き、あらかじめ調べておいた格安の駐車場に入れようとしたら、満車。
しかたなく近隣のやや高い駐車場を探してから、光が丘駅へ。
得した気分を吹っ飛ばされつつも、現在書いている小説でイベントのある土地なので、時間の許す限り取材(徘徊)した。
講座に参加した目的のひとつが、東京のいろんな土地、駅、電車に乗ることでもあったので、最後もちゃんと仕事ができてよかった。
さて、ここからは鉄道の話なので、興味がない方はすいません。
光が丘は都営大江戸線のターミナルで、大泉学園に向けた延伸計画もあるらしい。
そんな話が出るほど財務体質が改善したのかと隔世の感をおぼえるが、そもそも都営地下鉄の4路線は、そのすべてが異なる規格という、コスト体質のカタマリのような業態だ。
営団(東京メトロ)が引き受けなかったのも、むべなるかなといったところか。
たとえば浅草線は、京成と京急をつなぐため、1435ミリという標準軌を採用している。
同様に新宿線は京王線とつなぐため、1372ミリという変態規格(馬車軌道)を採用。
三田線は日本では一般的な狭軌(1067ミリ)で、東急(目黒線)とつながっているが、当初は東武(東上線)ともつなぐ予定だったらしい。
池袋に乗り入れないなど東武にとってメリットが少ないため、現在はシンプルな状況となっている。
このように都心の地下鉄は、近郊の私鉄をつなぐという存在理由を課されているわけだが、今回利用した大江戸線に関しては、この目的に当たらない。
完全に独立した路線なのだ。
よって「鉄輪式・リニアインダクションモーター推進方式」という変態的な方式を採用しても、他社に迷惑がかからない。
いや、メンテナンスなどのため他の路線に乗り入れる場合については牽引してもらう必要があるが、それも標準軌の路線に限られるという厄介者ぶり。
軌間という問題について語りだすと長くなるので今回は控えるが、わるいのはだいたい大隈重信と原敬、という意見には同意する。
せめて修正のチャンスをつかみ、後藤新平に仕事をさせるべきだった……。
ともかく、いろいろあって厄介な状態になっている都心の地下鉄業界において、莫大な借金を抱えていた都営地下鉄だが、最近は黒字化してきているらしい。
このままいけば東京メトロと一元化することも夢ではないようだ……が、いまさら感はある。
などと考えながら、五反田に向かうべく大江戸線に乗った私は、時間もあったため、JRに乗り換えるという選択肢を排し、そのまま大門へ向かった。
このあたりの地下は深い。
40メートルを超える深さで知られる六本木をはじめ、麻布十番、青山一丁目、大門など、周辺の地下鉄駅は軒並み、かなり深い場所にある。
大江戸線大門駅は、エスカレーターを二回、上がらなければ浅草線に乗り換えられないなど、その深度差を体感させてもらった。
こういうダンジョン感は、けっこう好きだ。
毎日使っている人にとっては、乗り換え時間が長くなればなるほどイラつくことだろうが、たまに冒険したい(エセ)乗り鉄にとっては楽しい。
ちょうど浅草線の大門駅で停車していた、京急の赤い車体に乗り込む。
目指すは三崎口。
都心を走る列車とも思えないボックス席のハンドルに手をかけて、身体を支える。
なんとなく1駅乗って、三田で降りた。
乗る前からわかっていたが、京急で五反田には行けない。
それは「京浜急行」だからだ。
乗り入れ割合はよくわからない。
馬込の車両基地という用途はあるので、まったく走らないということもあるまいが。
三田のホームで浅草線を待っていると、つぎにやってきたのは誇らしげに「北総鉄道」の看板を光らせる灰色の車体だった。
どうやら羽田に向かうらしい。
なつかしいなと思いながら(もと鎌ヶ谷市民だ)見送っていると、ほどなく浅草線の朱色の車体がやってきた。
安心して乗ったところ、泉岳寺どまりの回送車両だった。
しかたなく降りて、向かいで待っていた当駅始発の西馬込行きに乗った。
五反田まで2駅。
揺られながら、いわゆる「浅草線」について、泉岳寺から先を切り離して「五反田線」にでもしろ、という意見は正しいような気がした。
そのくらい浅草・泉岳寺間を走っている列車の需要は「羽田」や「横浜」や「成田」に偏っていて、西馬込から泉岳寺までの路線は「ローカル支線」にすぎない。
そもそも大半のひとが五反田で降りるので、それ以外の駅は「池上線みたいなもの」といえば目安となるだろうか。
などと考えながら、目的地に着いた。
この短い期間に、まあまあいろんなことがあって楽しかった。
やはり鉄道は乗ってナンボだな、と思う。
たぶん、私のような目的や興味のないひとが乗ったら、めんどくせえ、ややこしい、どうでもいい、とげんなりするだろう。
気持ちはわからないでもないが、興味をもって向き合うと、つまらない場所におもしろいものを見つけられたりするかもしれませんぞ。
最後に鉄道ミステリの大御所、西村京太郎先生の名言を紹介しよう。
作中に一か所、鉄道的に「まちがっている」ことを書くと、すこしだけ売り上げが上がる、という。
どうやら「突っ込みたい鉄オタ」需要というものがあるらしい。
鉄オタの業の深さを思い、ちと笑ってしまった。
私もこの短い文章中に一か所、まちがっている、というか記憶が正確ではないかもしれない表現を残している。
ちゃんと調べて正確に書き直そうかとも思ったが、あえて残すことにした。
それはないだろ、と気づいた暇なひとは調べてみていただきたい。
私はあのとき、いったい……。