病んだ脳のため、落語を聞いている。
昔から志ん生が大好きで、かの名人の話芸にすがり、定期的に心を洗ってきた。
志ん生のどこがすごいのか、と問われれば、ひとことで言えば、「同じことを別の落語家が言ってもおもしろくないが、志ん生が言うとおもしろい」だ。
これを評論家などは「フラ」と表現する。
志ん生のフラは神業だが、志ん朝にも受け継がれているような気がして、最近はそちらもよく聞くようになった。
志ん生を別格として、聞いておくべき落語の名人は五人ほどいる、と私は考えている。
以下つらつら書き著そうと思ったが、かなり長くなりそうなので、今回は、すこし異なった方向から「笑い」について考察してみたい。
さっき、とあるヒーローものの映画を観ていて思ったことだ。
映画やドラマの「悪役」は、女子校生に似ている。
いや、「女子校生は悪」と言っているわけではない。
よく笑う、という部分が似ているのだ。
笑いの理由にいまいち共感できない、という意味を含む。
連続殺人鬼が人を殺して笑うのは、まあ殺人が快楽なのだろうから理解はできる。
それ以外でも、一般に映画などに登場する悪役が「ははははは」と笑いながら登場し、あるいは去っていく印象は、とても強い。
悪役に限らない。
『黄金バット』というアニメがあったのだが、なぜか彼はとてもよく笑っている。
おそらく愉快なことがあったから笑っているのだろうと思われるが、具体的に、なにに対して笑っているのかは伝えられない。
よく笑うなあ、なにがおもしろいのかなあ、と思って眺めている。
女子校生もまた、よく笑う。
おばはんも下品なほど笑うが、彼女らには一応、笑う理由がある(と思われる)。
一方、女子校生は、箸が転がっても笑う、という言葉があるくらい、理由もなく笑う(ように表現されることが多い)。
幸せそうな少女たちを眺めていると、こちらも幸せになってくる。
ともかく、彼女らは、たいした理由もなく笑うらしい。
もし、悪役が、たいした理由もなく笑っているとしたら、とてもよく似ていると思わないだろうか。
で、調べてみたところ、ウィキに「悪の笑い」という項目があった。
「フィクションに登場する悪役につきものの昂揚した笑い方」らしい。
ここには、「何らかの形で勝利が得られた時」とか「他人に優越感を示すとき」という状況が明示されている。
なるほど、優越感か。
ヒーローに負けた悪役が、「はははは」とマントを翻して去っていく。
負けたわけだから勝利ではないので、彼が笑っている理由はつまり……優越感……?
ちがうような気がする。
負け惜しみなら理解できるが、それにしても笑うのはおかしい。
それ以外の理由が書いてないので忖度するしかないが、すくなくとも正義の味方の黄金バットが、優越感をひけらかして生きているとしたら、とてもいやだ。
彼らが笑う理由には、大いなる疑義がある。
さて、女子校生が笑う理由に戻ろう。
彼女らは優越感で、えらそうに笑っているか?
明らかにちがう。
にもかかわらず、悪役の「はははは」と、女子校生の「あははは」は、なぜかとてもよく似ているように思えるのだ。
ひとことで言えば、「たいした理由もなく笑っている」らしい点。
バカなのかな……。
いや、失言でした。
私のように浅慮な人間には、とうてい思いも至らない深い理由があって、彼ら彼女らは笑っているのだろう。
ぜひ志ん生師匠の意見をお伺いしたいものだが、こういう分析は枝雀師匠のほうがお得意かもしれない。
とりあえず私のような凡人は、この名人たちが提供してくれる質の高い笑いにすがって生きるしかないようだ。
笑いに満ちた世界へ。
救いを求めて。