私は人より多く言葉を使ってきたので、それに対する「こだわり」が強い。

 すこし気になった「口癖」の話をしよう。

 

 たぶん、だれにでもあるだろう。

 口癖。

 

 私にもあるかもしれないが、指摘されたことはない。

 なぜなら引き込もりで、人間と話すこと自体があまりないからだ(苦笑

 

 

 で、ある番組を見ていて、著しく気になった。

 その人の口癖なのだろう、「要するに」を連呼している。

 

 よくいるタイプなので、身近で思い当たる方も多いだろう。

 何度も「要」しているはずなのに、ちっとも要約されていない。

 

 だらだらとしゃべりやがって……要せよ。

 心のなかで、何度突っ込んだかわからない。

 

 こういう口癖には、どんな深層心理があるのか。

 グーグル先生に訊いてみた。

 

 ある心理学者さんによると、こういうことだ。

 

 「要するに」を多用する人は、仕切り屋タイプです。

 自分に自信があり、その場を仕切りたがっているのです。自信があるので、すべての意見をまとめられると思っています。

 このような人の存在は、グループや相談には必要不可欠とも言えるでしょう。

 

 なるほど、彼は仕切り屋というわけだな。

 で、それを聞かされる側の心理も分析していた。

 

 そういう言葉が、心底きらいな人もいます。

 断固たる意見を持っていて、頑固一徹な人です。

 そういう自分の絶対的な意見を、「要するに」で片付けられるのが、どうしても納得いかないのです。

 

 ……ん?

 この説明に、聞かされる側である私は、違和感を覚えた。

 自分の意見を絶対的だと思っているつもりはないからだ。

 

 この心理学者さんによれば、「要するに」が許せない私のような人間の側に、より大きな原因がある、というような指摘である。

 せっかく仕切り屋が仕切りたがっているんだから、おおらかな心で受け入れてやりなさい、それができないあなたの了見が狭いですよ、というわけだ。

 

 待て、そうか?

 あんた、本当にわかっているのか?

 

 

 納得いかなかったので、さらに調べた。

 同じ話題で、発言小町さんに、このような書き込みがあった。

 

 「要するに」を多用する上司が、全然、要点を得ていない。

 

 まさに、そこだ。

 前述の心理学者が明らかに履き違えている部分が、そこなのだ。

 

 問題は、自ら「要する」と言っておきながら、ちっとも「要していない」点にある。

 

 ほかに挙げられている例として、

 

 変じゃないのに「変な話」と言う。

 逆じゃないのに「逆に言うと」。

 

 こういう言葉を使いたがる男が多い。

 もっと言葉は正確に使え、と。

 

 

 まあ男が多いかどうかはともかく、かなり納得がいく指摘だった。

 で、それに対する答えが、また的確だった。

 

 「要するに」「変な話」「逆に言うと」を連呼する人々は、他人に伝えようとしているのではなく、自分の言葉に言い換えることで自ら内容を把握しようとしているだけです。

 それらはただの口癖であって、意味のある言葉として受け取ってはいけません。彼らが自分を納得させられるまで、生ぬるく待っていてあげましょう。

 

 なるほど。納得せざるを得ない説明である。

 心理学者さんも、このくらいの了見をもって分析していただきたいものだ。

 

 

 話すという行為は、話し手本人が納得したり、すっきりするためのものである。

 そう考えると、口癖とは「自分との会話」のようなものなのかもしれない。

 

 その意味では、むしろ女子のほうが、ただ聞いてほしいだけという傾向が強いような気もするのだが……。

 もちろんそういう男の上司が多数いて、男は本当にクソッタレだな、と小町さんが思うのも、理解はできる。

 

 「要するに」女の腐ったような上司、というわけだ。

 この使い方は正しいかな?

 

 で、高文脈言語である日本語の特性を最大限活用し、「要するに」が口癖の人の言葉は、このように解釈してやればよろしいのではないかな、と考える。

 

 「(要)約するつもりはないが、頭のなかで整理しながら話す私の気持ちを、きみも察(するに)」。

 

 相手の良識に著しく依存した言い回し、それが「要するに」なのだ。

 

 

 結論。

 

 彼らは「要するに」ではなく「思うに」と言い換えれば、これほど突っ込まれなくて済むのではないだろうか?

 思うのは、自由なのだから。

 

 そんなことを「思った」、きょうの私である。