私は鉄オタではないのだが、鉄道にすこし興味がある。
すこしだよ。ほんのすこしね。
で、先月は最北の駅(稚内)に行ったので、最西の駅も行こうかな……。
何年か前、沖縄のゆいレールは行ったが、あれはあくまで新交通システム。
そういえば使い残しのプリペイドカードが手元にある。なぜか捨てられない。
最西は、普通鉄道では松浦鉄道のたびら平戸口。
200円で記念カードが買えるらしい。
JRでは佐世保駅。
帰り道なのでついでに寄るとしよう。
ちなみに普通鉄道の南端の西大山駅は、砂蒸し温泉に行ったついでに、横を通り過ぎただけでちゃんと見なかった。
正直、あまり食指は動いていない。
最東端の東根室駅は、一生、行かない気がする。
札幌周辺のように、いくつか目的が重なれば行くのだが、東根室周辺……私の地図でスターがついているのは風蓮湖くらいだ。
鉄道関係で食指が動いたのは、駅間距離の「記録」。
これからの旅程に絡めるのに、ちょうどいい。
以下、ちょっと調べたので書いておく。
東京で駅間が短いのは、東急池上線の五反田~大崎広小路間、300メートル。
山手線での最短は、日暮里~西日暮里の500メートル。山手線の電車の長さが220メートルなので、たしかに近いが、その電車よりも短い駅間距離がある。
最短なのは、高知県の軌道路線(路面電車)、土佐電気鉄道後免線の一条橋駅~清和学園前駅の84メートル。
高知行きの飛行機も予約してある。ここはぜひ乗ろう。
で、路面電車を除いた普通の鉄道では、長崎県の松浦鉄道西九州線の中佐世保駅~佐世保中央駅の200メートル。
この短い区間も、ぜひ見てやろうと決めた。
どんな場所かは、たくさん動画が上がっているので、興味のある方はそれを見られるとよろしい。
私は雰囲気を感じたいタイプなので、直接、行ってきた。
たしかに、行った。
佐世保。
目の前で見た。松浦鉄道の走る姿。
だが、乗っていない。以下、その理由を述べる。
乗り鉄タイプとしては恥ずかしい限りだが、鉄道のどこに美を感じるかという根源的な部分に、その理由を求めることができると思われる。
佐世保に着いたのが、午後5時近かった。
いつものように近場の駐車場に車を入れ、街へと繰り出す。
ちょうど帰宅ラッシュの時間帯。
特殊な環境を、縫うように走る路面を見つめ、不安がよぎる。
うまく乗れるだろうか?
松浦鉄道の乗り方を検索し、熟読する。
──これは、手ごわい。
まず、鉄道とは移動のツールであって、それを「楽しもう」などという輩は例外的な存在であることを、自覚すべきだ。
鉄オタごときが、通勤通学など本来あるべき目的で移動しようとしている人々の邪魔になっては、断じていけない。
私は、そう信じている。
観光で、たった1区間、170円ごときを支払って、たわむれに乗って去る者。
そのような軽率な人間が、日常的に利用する乗客の邪魔をしていいものか?
いや、よくない。
真剣に「させぼナビ」を読み込む。
松浦鉄道には「ちょっとした作法」なるものもあるらしい。
後部乗車で車内清算、前部降車。
整理券を取り、特有のカード(長崎スマートカード)か切符、あるいは現金で支払う。
なるほど……。
問題なく乗れるとは思うが、淡々と日常使用するユーザーの流れに乗れる自信までは、いまいち持てなかった。
中佐世保駅と佐世保中央駅のあいだ、200メートルをしばらくウロウロする。
かわいそうな40男。
もし、ふつうにスイカが使えたら、乗っていた。
さすがにタッチするだけなら、現地の方々の邪魔にはなるまい。
あるいは昼間、乗客の少ない閑散時なら、はじめてのルールに多少戸惑ったところで、大目に見てくれるだろう。
だがラッシュ時はいけない。みなさん疲れてご帰宅なのだ。
その流れに棹差してよいものか?
いや、よくない。
というわけで、鉄道に乗ることは控えた。
その代わり、駅の周辺を丹念に調査した。
むしろこっちのほうが、私としては興味深い発見が多かった。
ふつう、駅のほうに近づくにしたがって、空気は明るく、人々の気配は多くなるものだ。
佐世保中央駅はちがう。
アーケードの片隅に、駅の看板が掲げてある。
この道を曲がると、その先に駅がある。
……暗い。怪しい。ひと気がない。
明らかに「路地裏」であり、できれば近づかないほうがいい雰囲気を醸し出している。
その暗がりの先に、駅があるのだ。
中佐世保駅。
驚くべき斜面と高層マンションに穿たれた隙間にある、なんというか「引っかけられた」ような駅。
階段の途中から、そのまま線路面に出られる。
昔からありそうな家々には、濃厚な昭和の雰囲気を感じる。
その濃厚な「雰囲気」で、お腹いっぱいだ。
この駅なら、悪魔も住むだろう……。
脳内にイメージを膨らませつつ、駐車場に戻った。
電車に乗るより高い駐車料金を払ったので、勘弁してください佐世保さん。
さて、次は本命、長崎市だ。