いとほしや さらに心の をさなびて 魂ぎれらるる 恋もするかな

平安時代の最末期に西行法師が二年余り過ごしたところです

西行の深い心の淵を窺がえる句

奥駈修行を志して吉野に来て、二度満行したと伝えられます

その二度の修行の間に目にした吉野の桜に魅せられた西行が、この後、全国行脚の際に各地で吉野の桜を褒めちぎったことで、吉野が全国に知られる桜の名所になったのです

なげけとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな 

たづぬとも 風のつてにも 聞かじかし 花と散りにし 君が行方を

 もろともに われをも具して 散りね花 うき世をいとふ 心ある身ぞ

花散らで 月は曇らぬ よなりせば ものを思はぬ わが身ならまし

ともすれば 月すむ空に あくがるる 心の果てを 知るよしもがな

よもすがら 月を見顔に もてなして 心の闇に まよふ頃かな

花見にと 群れつつ人の 来るのみぞ あたら桜の とがにはありける

何となく 春になりぬと 聞く日より 心にかかる み吉野の山

恋しきを たはぶれられし そのかみの いはけなかりし 折の心は