「無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽」

とどのつまりがこうなった

それは当たり前、縁の結晶なのだ

母の胎内に命が芽生えた時から死への道が始まる

触れ合い、触れ合い

縁がなければ出会わない

縁こそが幸か不幸の分かれ道

黒い霧が近づい来ると思っていたら

今はもう暗闇

愛に酔いしれて道に迷い転落した

眼を開いたら明るい陽射しが射していた

這い上がると風物詩の世界が蘇った

 

「無苦集滅道」

苦しみを集めて駈ける茨道

苦しんで渡る世間の波荒く

苦しみを苦しみとせぬ心、花筏

苦しみを鞣して、渡れば水温む

そこのけ、そこのけ煩悩が走る

走るあとから炎が燃える

もうすぐ炎に焦がされる

早く消さぬと遅くなる

 

1996年10月号プレジデント・詩で詠む『般若心経』菊村紀彦著より(ひらがなを漢字に変換しています)