「依般若波羅蜜多故」

鳥が帰る、鳥が帰る、何処へ

空の彼方はやすらぎの故郷

鳥が帰る、鳥が帰る、なぜ

智慧を求めて

「心無罣礙無罣礙故」

涙は枯れてその後はすべて忘れて

目覚めた人の微笑ばかりが

若葉の薫り

涙の後に微笑、それが安らぎ

雪はよいよい積もれば怖い

溶かす心の温かさ

雪に触りはないけれど

拘る心にしんしんと降り積もるけだるい重さ

「無有恐怖」

地球が燃え尽きてもいい

太陽が蒸発してもいい

目覚めた心に恐怖などないのだから

大宇宙が火の海になってもいい

哲学した心は燃え尽きることがないのだから

悪魔や鬼を怖がる人は迷信におののく人

悪魔や鬼の怖がる人はお経の心を弁えた人

 

1996年10月号プレジデント・詩で詠む『般若心経』菊村紀彦著より(ひらがなを漢字に変換しています)