人生は咲きながら散る桜
桜が見せる「生と死」
「桜の花はこの上もなく明るい。そして淋しい花でもある。人に他界を見せる花だと言ってもよい。花吹雪の下にいると、古来数知れぬ鬼どもがその花の下に睡っているのを実感させられる」
追手門
坂口安吾は「桜の森の満開の下」に花びらに埋もれて消えてしまう妖艶な鬼女を登場させた
東側内堀
梶井基次郎は屍肉から養分を吸い上げる桜をイメージして「桜の木の下には」という小説を書いた
満開の桜は、人に「他界」を見せる花、死界をイメージさせる花なのである
追手向櫓
しかし、一方で、これほど季節の再来と生命の息吹を告げ知らす花もない
水鏡
桜の花の下を、新たな希望をいだき歩む人がいる。ブルーシートの上で、狂気のような酒盛りに興じる人々がいる
吉野山には何台ものバスが連ね、50万人の花見がくりひろげられる
西行のように「まだ見ぬ方に」一本の山桜を訪ねて歩く、情緒の深い旅人もいることだろう
今年も間もなく、桜が咲く。その明るさの中に、生き別れ、死に別れてきた人たちとの出会いもある
前登志夫が亡くなりその半年後、吉野山・金峯山寺に歌碑が建立された
その歌は、「さくら咲くゆふべの空のみずいろのくらくなるまで人をおもへり」という平易な歌である
しかし歌中の「人」というのは生者であるか、死者であるかの表現はない
今年58回を迎えたお城祭り
特定の個人をいうのか、ひと一般をいうのか、あるいは生きて在る人をいうのか、もしくは死んでしまった人たちをいうのか「読む人がかってに判断してよろしい」とでも言っているかのようだ
トリックのような桜の歌を吉野の山にしたため、10年前のこの季節に前登志夫は去った
三の丸緑地入り口のボンボリ
青文字は、奈良新聞「明風・清音」・・・中井龍彦氏より














