高齢の挑戦、支える配慮

先日、父の三浦雄一郎とともにヒマラヤでのトレーニングを終えた後、シェルパ―の里ナムチェに立ち寄った

急坂の下り、ロープが取り付けられている

そこでミン・バハドゥール・シェルチャンの訃報を聞いた。85歳でエベレストの登頂を目指す途上での落命であった

標示板の上にペンチが置いてあった。取り付けた際に忘れたのだろう

シェルチャンは2008年、当時最高齢の76歳でエベレストに登頂した。同年に父も75歳でのエベレストを目指していたこともあり、ベースキャンプにいた彼を訪ねたことがある

道が整備されているのでトレーニングするのにはよいところです

物腰は柔らかく、それでいて威厳のある人であった。父と会うなりシェルチャンは「あなたは私にとって先生である」と言い、ともに山頂に立とうと約束をした

肘を曲げたような「肘曲り」に差し掛かった

この時、先にエベレストの山頂に立ったシェルチャンは、5年後に父が80歳でエベレストに登るまで、最高齢者での登頂記録を保持し続けた

鬱蒼とした森に陽が差し込む

シェルチャンもまた同じ13年に81歳でエベレスト登頂を目指していた。その際も挨拶に行ったが、この時の彼は歩くのもやっと

H・F氏が転んだ。さかんに膝を押さえている

岩場に木の根が張り出しており、滑ったようだ

山はいかなる場面でも滑らない、転ばないの訓練なのです

高山病に罹り、山から下りなければいけなかった。彼はエベレストのベースキャンプにヘリコプターから直接降り立つ手法をとっていた

川の中を下りました

おそらく体力温存のためだと思うが、このやり方が高所に順応する時間を奪っていた

陽が傾いてきました

僕たちは父の年齢を考え、多くのことに配慮しながら登る。持病の不整脈や体調、高度順化の進み具合を確かめ、国際山岳医である大城和恵医師と相談しながら、低い標高からゆっくりとアプローチする

まむしに注意

日陰の湿地帯に生息することが多い

父の健康に最大限の注意を払い、戦略を練り、数年かけて調整したうえでのチャレンジである

三叉路分岐

酸素が限られたエベレスト山頂は、生存環境としてあまりに過酷だ。20歳の人でもエベレスト山頂での有酸素能力は100歳前後になる。父の場合は150歳以上ともいわれる。地上で最も高い山への父の挑戦は、エイジングへの究極の挑戦でもある

太陽と緑の道は、舗装道路を右にとり大塚山北公園に入る(見落としやすいので注意が必要)

シェルチャンの訃報を受け、ネパール政府には、エベレスト登山に年齢の上限を設けようとする動きがある。しかしこの貴重な場所を人為的に制限することは、人類の可能性に蓋をすることではないだろうか。もちろん人命は最優先に守らなければいけないが、極地での判断に必要なのは、リスクをすべて排除することではなく、その度合いを正確にはかることである。シェルチャンの冥福を祈りながら、彼の遺志を酌んだ議論が交わされることを願う

※青文字は、日経夕刊「三浦豪太・探検学校」より