やわらかいところに散った花びらで恋占いをしたき真夜中・・・沙羅
弥山小屋

洞川から立派な参道がついている
 稜線上の洞辻茶屋へ出ると、吉野の方からの縦走路と一致する

 大峯山脈の所謂七十五靡の北端から忠実に辿ってくるルートである
洞辻茶屋から山上ヶ岳までの主稜中に岩壁の上を通る所があって、そこに有名な「西の覗き」がある

  先達が登山者に命じて岩の上から深い谷を覗かせる
もしそこで親孝行を誓わないと、下へ落ちるというのである
小生も四年前に体験した

  私たちはまだ人のいない竜泉寺の宿坊に泊まって、翌朝頂上に立った
 正面尾の扉には大きな南京錠がかかっていた
 この錠が開けられるのが扉開きの五月七日で、この日から開山になるのである
 山上ヶ岳から南へ縦走路に入る。小篠ノ宿、脇ノ宿など昔の行場を経て行く
 もうこの辺まで来ると信仰的記念物もなくなり、純然とした登山の領分になる
もちろん女性にも許されている

  大普賢岳から行者還岳までの間は、縦走路の中で最も険峻とされている
夕方遅く弥山の山小屋に着いた

  翌朝、残雪を踏んで八経ヶ岳の頂上へ登った
1915m、近畿の最高地点である

  空はよく晴れ、大峯山脈の諸峰をはっきりと望んだ
ここからさらに南へ縦走路は延々と続くが、私はその最高峰を踏んだことに満足して山を下った

  深田久弥著「日本百名山」より