★「全員で相続放棄」なんて、簡単じゃあないです!放棄した人が情報を伝えないとまずい | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。

★借金まみれの遺産「全員で相続放棄」は意外に難しい!貧乏くじ引かせぬよう情報共有を
 

 

 

以前書いた「相続放棄とは──法定相続人の順位にも影響!! ただの「辞退」に非ず」と同じ問題です。

 

 

相続放棄をするとその人は「初めから相続人ではなかった」ことになります。

相続人だった人が突然、透明人間になってしまいます。
そこにいるのに姿は見えない。

この状態、相続では透明人間になってしまうというショック以上に親族に大打撃を与えることになります。

 

 

第1順位の法定相続人が全員透明になると、有無を言わせず民法は被相続人の両親を法定相続人にします。
「子(この人たちから見れば孫)がいるから私たちは相続に関係ない」と思っていた祖父母を、突然相続の場に引っ張り出すのです。

 

 

ところが目にした息子の遺産は大借金まみれ。
先立たれた上にそんな状況に追い込まれたら・・・・・。
と悲嘆に暮れている暇はない。
何しろ相続放棄するなら、「相続を知った時から3か月以内」にしなければならないのだから。

 

 

老骨に鞭打って、夫婦で家庭裁判所まで赴き相続放棄の手続き。

「やれやれ、なんとか間に合った」
とほっと一息つきたくなるのが人情だと思う。
でも本当は、相続放棄したのならそれを自分の子ら(被相続人の兄弟姉妹たち)に伝えてあげなければ、まずい。

 

 

第2順位の法定相続人だった自分たち夫婦が相続放棄をしたら、当然に第3順位のわが子たちが相続の矢面に立たされる。

いま私は「当然に」と書いたが、法的に当然にではあるものの、こんな相続の知識を正確に知っている人がどれほどいるのだろうか。
「常識」と言うにはあまりに”精妙”すぎる。
わかりにくいのだ!

 

 

相続人には順位があって
(配偶者は特別な存在で順位なしに常に相続人。ああ、わかりにくい)

順位ごとにもらえる分に差が付けられている。
順番があるからいつかもらえるのかと思えば、前の順位の者が1人でもいればお呼びがかからない、ただの人。
それなのに前順位者が相続放棄した途端に声がかかる。

 

 

『残り物に福がある』どころか、こんなときにお呼びがかかるんじゃあ、ろくなことではないというのが相場で、その通り。
相続人にされてみれば遺産は大借金だ!!

「第1順位も第3順位も締め切りは3か月なんてあんまりだ。第一、相続放棄したなんてこと、知らされてもいない」
と言いたくなって当然だ。

しかしそんな主張(というより嘆き)は一顧もされない。

 

 

「相続放棄」という決め事、危なすぎると思う。
意味を誤解している人が大勢いるに違いない。
だから大借金を遺す場合、第一に遺す者(被相続人)が相続人たちに仁義を切って頭を下げ、事前に(嫌な情報であろうと)借財を事細かに伝えておくべきだ。

 

 

次いで、先頭切って相続放棄する者は、「ああ、自分は助かった」ではなく、放棄する理由を推定相続人全員に知らせる義務があると、自分の責任を自覚しておくべきだ。

 

 

「相続放棄」は実に分かりにくい概念だ。
心してこの”常識”を心に刻んでおこう。