★法定相続分は権利じゃないの?! 「そんなの常識だ」と思った私の非常識 | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。




先日相続セミナーを開いたとき、高齢男性から質問を受けました。
「法定相続分があるんですが、遺言とどっちが強いですか?」


とっさのことに、条件反射のように「それは遺言書ですよ」とお答えしたんですが、今はちょっと後悔しています。


その時の私は『案外、相続について何もご存じないんだなぁ』と思ってしまったんです。
かくいう自分も、行政書士の勉強を始めてから初めて「法定相続人」やら「遺留分」という言葉を知ったわけで、
<ふつうの人は知らなくて当然>
といった思いがどこかにあります。


事実、相続を経験した人でなければ「遺産分割協議を相続人全員で行って、遺産の配分を決める。その決定は全員一致でなければならない」などということも、あまりご存知ではないのでは?


というわけで質問を一蹴してしまったわけですが、冷静にその言葉を振り返ってみると、
「自分は相続人のひとりです。(お年から考えて)私は被相続人の兄弟で(被相続人には子がいないので)私にも法定相続分があります。(被相続人の兄が)お嫁さんに全財産を相続させるという遺言を書いた場合、私の法定相続分はどうなるんでしょう」


このようなことを聞きたかったのではないでしょうか。
そうと分かっていれば、もっとていねいに説明すべきでした。
この人の場合、私が推測したように亡くなる方の兄弟であるとすれば「法定相続分は遺産の4分の1」あることになります。
しかし兄が上記のような遺言を遺せば、「法定相続分」は消し飛びます。
「法定」という言葉が付いているにもかかわらず、「法定相続分」は必ずもらえるという権利ではないからです。


さらに言えば、第2位の法定相続人までには「遺留分」という法定相続分の半分までを取り戻す権利がありますが、被相続人の径庭姉妹は第3位の相続人ですから、遺留分がありません。
だからこの人は兄に遺言を書かれたら万事休す。
遺産は1円ももらえないことになります。


もちろん、そういう趣旨の質問だったかどうかはわかりません。
でも『申し訳なかったな』という思いが、今も残っています。


そんなこともあって「法定相続分」について普通の「とは物(短い用語解説)」の何倍かありそうな”ていねい解説”を書いてみました。



★法定相続分とは──争族裁判で参照される各相続人の取り分(「権利」ではありません
http://yuigonsouzoku.net/legal-inheritance/