モーグル、上村愛子の“冬”が終わった。
ソチ冬季五輪女子モーグル決勝。
1番手で上村愛子は滑った。
速い速い、エアも決めた!
高得点が予想された。
しかし……
競技のあと上村は笑顔だった。
「やってきたことがすべて出し切れたから……」
すがすがしい気分と彼女はいう。
僕はなんだか、こみ上げてきた。
でも、泣いたら失礼なのだと思う。
1998年(長野、18歳) 7位入賞
2002年(ソルトレイク、22歳) 6位入賞
2006年(トリノ、26歳) 5位入賞
2010年(バンクーバー、30歳) 4位入賞
そして
2014年(ソチ、34歳) 4位入賞
トリノではエアの大技、コークスクリューをやってのけた。
それでも5位。
以後、苦手意識のあったターン技術を磨いた。
2008年にはFISワールドカップで年間総合優勝を遂げる。
「女王」の座を獲得し一時代を築いた>
上村愛子は一流選手である。
縁がないのはオリンピックだけ。
2010年、バンクーバーで4位に終わった時、
「なんで、こんなに一段一段なんだろう……」
と無念の表情を見せた。
<写真はモーグル決勝を滑る上村愛子 by 共同通信>
そしてソチ。
気持ちはわかるが34歳、最年長。
予選、準決勝もぎりぎりで通過。
準決勝も6位、ラスト順位での突破だ。
『ピークはとうに過ぎているんだろうな』
そう思うと「メダル、メダルと騒ぐな!」と
メディアにいいたくなった。
決勝。
快速だったと思う。
30秒台で滑り降りたのは上村しかいない。
2つのエアもほぼ完ぺきだった!
最後に滑ったハナ・カーニーは脚が雪につかずにバラバラ。
上村が3位に滑り込めたかな、と思ったが……。
採点競技の悲劇というべきだろうか。
滑降順位の不利は否めなかった。
『上村でなくても神様を恨むよな』
順番なら今度は「3位」だろうに……。
しかし、こうも言える。
またも4位だったからこそ「上村愛子」の名を僕は忘れない!!
努力し続けた彼女は誰よりも美しい。
無念の4位ではない。
輝かしい4位だったと。
(ジャーナリスト 石川秀樹)
■関連する記事
★「苦い金」?いや、幸せな「金」だったのだと思う 羽生結弦の困ったような笑顔に思ったこと
★葛西紀明、レジェンドが「伝説」になった日 スキージャンプ個人ラージヒル