新聞が来ない。きのう休刊日だったことを忘れていた。
なんともハラハラドキドキの優勝だった。
3日目、2位と3打差をつけ単独首位に立った。
ツアー初Vが名門、よみうりCCのゴルフ日本シリーズになるのかもしれなかった。
だから所要で出掛けるとき、ビデオをセットしておいた。
妻は「勝ったらメールしてあげる」と言っていた。
午後5時前、着信音が鳴った。
朗報だった!
さて、試合の経過である。
結果は知っている、だから安心して観ていられる。
が、そうもいかない展開だ。
『これで本当に勝てるのか……?』
15ホールまで3連続ボギーを含め2打のダウン。
最終日最終組で回るのはこれで16度目。
いつも崩れていた。
「3度目の正直」という。
それを5回もやって1度も勝てない。
2位になること6回、勝利の女神にソッポを向かれ続けていた。
宮里藍のすぐ上の兄貴である。
勝負弱いわけがない。
アマチュア時代には何勝もし、22歳でプロに転じたとき
「勝利は時間の問題」のはずだった。
が、勝てない。
近ごろは「優作が勝てないのはゴルフ界の7不思議」とさえ言われる。
今回はチャンスだ。
3日目単独首位に立つのは本人史上初、しかも3打差ある。
最終日、優作もへこたれていたが他も伸びない。
この日の寒さのせいだった。
ところが6打差スタートの呉阿順がスルスルと上がってきていた。
気がつけば16番では1打差に迫っている。
ロングホールの17番、呉は2打でグリーンエッジまで来ていた。
バーディーほぼ確実、ここから2打で宮里と並ぶ。
この時、直後の組の優作はグリーン上を俯瞰(ふかん)する位置にいた。
カップ上から呉が4打目を打つ。
球はカップをかすめて右に抜ける。
ホッとしたはずだ、優作はこのホール、バーディーをもぎとった。
呉とは2打差をつけた。
そして18番ホール、呉は痛恨のボギーとした。これで3差。
宮里がティーショットを放つ。
球は左方向に。フェードして右に戻るはずだった。
しかし「アドレナリンが入っちゃったね」
解説の青木功プロが言ったように左への力がわずかに強く、球はグリーンにはね、わずかに転がり落ちた。
止まったのはラフとエッジの接する所。
打ちにくい。
嫌な予感がした。
(これはビデオだ。優作が勝ったことは知っている。それでも不安になる展開だ)
素振りする。ウェッジの先端が草を咬んで止まってしまった。
本番。球は低く出てグリーンを転がる。
トップ気味? 止まらない。
ゆっくりと、コロコロどこまでも。
ついに右方向にグリーンを外れ、途中から左に方向を転じてラフで止まった。
ここから3打以内でカップインすればいい。
が、この18番、“魔物”と言われている。
グリーンがお盆を傾けたように極端に傾斜している。
プロでも3パットが続出しているのである。
『女神は、最後まで底意地が悪い……』
妹の藍ちゃんが見守っている。
グリーン周りに両親の姿も見えた。
宮里がゆっくりウエッジを振り抜く。
今度はフワッと上がった。
『どこまで転がるのか』
ワンバウンドして転がる、ピンの方向だ。
「入ったー!」
思わず手を打っていた。当の宮里よりも先に。
後は涙、涙……。優作が膝を折ってキャディーと共に泣く。
藍ちゃんも目をこする。
両親が泣く。
こっちももらい泣きをした。
結果的にはこのホール「パー」、通算3打差を付けての優勝だったが……。
鮮やかに印象が残る劇的な勝利だったといっていい。
女神さまの匙(サジ)加減だろうか。
辛く辛く、これでもかと辛くして、最後においしい水を用意した。
宮里3兄妹の中で最も才能があるといわれた優作が、初Vまでに11年を要したのである。
ゴルフシーズン最終日、最後の組。
待たせに待たせて“呪縛”から解放した。
事実はまさに、小説よりも劇的だ。
写真はYOMIURI ONLINEから(初優勝を決め、妹の藍さん(右)と笑顔で記念撮影に応じる宮里優作(8日)=佐々木紀明氏撮影)
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【筆者から】
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