★朝日新聞が「原発即ゼロの小泉氏会見」を1面トップに  勇気ある突出を無にしないようにしよう! | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。



けさ、朝日新聞を開いて「ウッ」となった。
小泉元首相の日本記者クラブでの講演を1面トップに据えている。


原発「即ゼロ」首相に迫る
小泉元首相会見
「決断すればできる」


原発のゴミ、核廃棄物の最終処分の方法も場所さえ見つからない状況を小泉氏は「トイレのないマンション」と批判してきた。
元々は自民党の首相であったし「安全」も信じていたのだろう、バリバリの原発推進論者だったが、福島の事故以来「反対論」に転じた。
11月12日の日本記者クラブの講演では、現職記者や新聞・テレビ局の幹部たちを前に熱弁を振るったようだ。

ジャーナリスト 石川秀樹


中で
「首相が決断すればできる」
「国民から与えられた権力を望ましい、あるべき姿に向かって使う」
「国民の多数が総理の決意に協力しようという機運が生まれる、こういう機会はめったにない。安倍首相は運がいい」
という言葉が印象的だった。


さて、この元首相発言のマスコミ各紙の扱いである。
朝日新聞の扱いは突出している。
各社横並びが常の日本の新聞界における“椿事”といってもいいくらいだ。


記事としてのバリュー(価値)はいかほどのものだったのだろうか。
人気者だった小泉さんの発言。
しかし今は政界を引退している身。
子分もいなけりぁ、政治的な野心もない(たぶん)。
ただし発言の舞台は「日本記者クラブ」。
身内のイベントだから、各紙の扱いは1翻(イーハン)増しになるだろう。
それらを見越して、共同通信なら「トップ級」としたのではないだろうか。


共同通信には多くの地方紙やブロック紙(中日・西日本・北海道・中国・河北などの各紙)、テレビ局が加盟している。
重要な記事はジャンルごとに「メモ立て」される。
メモになる記事はピーコ(各新聞社直結の館内放送。発声が「ピーコ」と聞こえる)で流されるから、マスコミ各社では事件発生やニュース素材の有様を居ながらにして知ることができる。
「トップ級」というのは記事の格付けだ。
1面トップでもいいかもしれない、といったニュアンス。
その上が「トップ候補」。
共同通信が強力におすすめする記事(朝夕刊ごとに1~3本程度)。
さらにゼッタイ的なニュースは「チャイム」といって、通常の「ピーコ」に代わってはでなキンコンカンコンが鳴る。


そういう中で「小泉元首相発言」は、ガンバッテもトップ級止まりの記事ではなかったかと推量した。
それを朝日新聞は1面トップに据え、2面と第2社会面でも関連記事を載せた。
破格である。
「非原発」を標榜している産経新聞でも、3面左肩の特集である(写真左)。
脱原発にかじを切ったように見える静岡新聞は、2面にカット付き4段見出しでトップ記事扱にするのが精いっぱい。
中日新聞は中部電力の地元にあって常に原発に警鐘を鳴らしている硬派の新聞だが、けさの扱いは(ネットから推測する限り)1面には出せなかったと推測する。


だからけさの朝日新聞の扱いは「勇気ある突出」だ。
“意図的な報道”だったと思う。
通常「意図的」とは悪い意味で使われることが多いが、今回は誉め言葉だ。


東北大震災・福島原発事故から1年8ヶ月が経過。
日本人はすっかり「原発と共存する毎日」を許容してしまったように見える。
いつの間にか、元の木阿弥……。
電力会社は臆面もなく原発再稼働に向けて走り出した。


こんな時に一言居士の小泉氏が「原発ゼロ」を言い始めた。
今すぐにゼロにはできない事情を挙げれは、千も万も「できない理由」は言い立てられるだろう。
それを直感力の鋭い小泉さんは「できる」といったのだ。


「首相の権力」のことをいっているのである。
菅直人元首相のことを愚かな宰相とこき下ろす人が多いが、その菅さんが放った一言で最も危険な浜岡原発が全基止まったのだ。
わたしたち静岡県民は菅さんに感謝してもしきれないくらいだ。
時の首相が「ゼロ」を言えば、流れは瞬時に変わっていくだろう。


けさ、全国紙がこぞって、また地方紙の多くが「記者クラブでの小泉発言」を1面トップに据えたら、世論はだいぶ動いたに違いない。
自民党が退潮、気息奄々(きそくえんえん)の状況に置かれていたら、安倍首相も原発即時ゼロをいったかもしれない。
小泉氏が「郵政民営化解散」で大ばくちを打ったように。
残念ながら国民は、前と変わったとはいえない自民党を衆院でも参院でも大勝させてしまった。


新聞の勇気をくじくのは国民。
「こんな国民だから、新聞もこの程度なのだ」
と、ノドまで出かかっているが、前言撤回する。
希望はまだある。
世論調査をすれば、国民世論の6割までは「原発はないほうがいい」と思っているのだから。
日本人の良識は捨てたものではない。
「新聞社の勇気ある突出を無にするべきではない」
と、声を挙げる人は多数いると僕は固く信じている。




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【筆者から】
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主にFacebookページ「ジャーナリスト 石川秀樹」に投稿しています。
ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。


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