★原発永久停止の市長が3選 枕を高くして寝る前にやるべきこと | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。



静岡県牧之原市の市長選で、原発永久停止を主張している現職の西原茂樹さん(59)が当選した。67歳の新人候補を抑えて3選目である。
静岡市民の僕には無縁の選挙だが、牧之原市は浜岡原発が在る御前崎市の北隣。
原発再稼働には隣接市町の合意が必要だから、西原さんのような人にはどうしても踏ん張ってほしかった。


政治家は「カネの都合」とは言わないが、「諸事情に鑑み」主張を曲げるのを常とする。
原発など利権に絡む代物においては特にその傾向が強い。
今日日(きょうび)は札束など積まれなくても、原発再稼働反対の空気が薄くなったと見れば、なだれを打ったように「仕方ないだろう、日本の経済のためだ」と宗旨替えをして恥じない。
信用ならない政治家が多い中で、西原さんは少し違うようである。
いや「大いに」違っているように、僕には思える。


当選の報を聞きながら、以前メモしておいた文章を懐かしく読み直したところだ。


◇(2012年8月末のこと)
先日、西原茂樹牧之原市長と静岡市内でお会いした。
今度書こうと思っているFacebookの本の事をFacebookに書いたところ、次のようなコメントをいただいたからだ。
「今、武雄市の樋渡市長とFB良品について『連携しましょう!』と話しています。その話と行動の早いこと…」
この話に興味を引かれ、ウォール上でコメントを返す形で取材を申し込んだ。しかし、相手は現職の市長さんである。簡単に会えるとは思っていず、『運がよければ、忘れたころに返事がいただけるだろうか』くらいの気持だった。すると、すぐさまメッセージが届いた。
「21日に静岡で会合があるので、その前に」
こうして実現した取材である。その時の話は別の機会に書くとして、きょうお伝えしたいのは別のことである。

ジャーナリスト 石川秀樹


西原市長はご存じのように、浜岡原発の永久停止を個人としてでなく「牧之原市長」として宣言している。原発廃炉を願っている僕としては、浜岡原発のある御前崎市の隣の市長のこの決断にはものすごく興味を引かれる。
それで本筋の話とは別に、浜岡の話も聞いてみたのだった。
いや、実に明快。勇気づけられた。


──静岡県でも浜岡原発再稼働の賛否は「県民投票」で決めようという署名活動がありました。18万人の署名を集め、一応「有権者の50分の1」という請願要件は超えたけれども、どうせ県議会では否決されるでしょう。


「Facebookは、きちんと名前を出して賛成、反対を言って来なかった日本に、名前を出してきちんという文化を持ち込んだ。多数決の前に、徹底した議論が必要です。原発立地地域と言うのは、今までは我慢する側、被害者だった。ところが今度は(事故を起こしたら)加害者になるんですよ。周辺にも、遠くの地域にもね」


──では、県民投票には賛成ですか?


「当然、やるべきでしょう」
※原発県民投票実施の提案は静岡県議会により2012年10月11日、否決された
(原案は賛成0、反対65、修正案は賛成17、反対48だった)



──牧之原市としてはどうですか、浜岡原発を再稼働するかどうかというとき、どう判断されますか?


「首長や議会と言うのは、決断する張本人です。イエスかノーか、そんな重大な判断、決められっこない。仮に(浜岡原発を)動かすのであれば、私だけでなく、議会だけでなく、住民に信を問いますよ。住民投票をやります。動かさないなら、黙っていますが」


──西原さんは、中部電力の株主総会(2012年6月27日)で浜岡原発永久停止の意見書を出しましたが、あれも市長としてですか?


「そうです。隣接市の市長として意見を出している」


──国の意見聴取会で中電社員が意見を出しましたね。「原発の直接の事故で死んだ人はいない」とかなんとか。


「法律違反ですよ。普通の工場・会社なら、事故を出せば倒産するのが普通です。雪印なんか消えてしまった。それが、あれほどの事故を引き起こしておいて電力会社は残っている。だいたい国は、原発をどうするかという重要な国策を決める時に、なぜ立地市町村の意見を聞かないのか」


──えっ、聞いてないんですか?


「大飯原発再稼働のときでさえ、知事と地元の町長に聞いている。それを今度は意見聴取会、ワークショップとアンケートごときで…。それが『国民の声』とはとんでもない。全国の立地自治体に聞くべきだ。そして地元は、住民の声を聞いて判断していく」


かくのごとくに西原市長の原発に対する姿勢は一貫していた。
──西原さん、だいぶ風当たりが強いでしょうね。


「いや、静岡県は原発に対する姿勢、反対が多いですよ」


と言いながら西原さんはiPadから資料を探し、2、3の資料を見せてくれた。講演するときのための資料をパワーポイントで作りiPadに入れているようだ。
僕は資料を詳細に見たくなり市長にお願いした。
「ファイルになっているなら、後で送ってくれませんか?」
「いいですよ」


ところがパソコンからは(何らかの不調で)送れなかったようで、きのうFacebookのメッセージが届き「きょうも静岡に行くから住所を教えて」との問い合わせ。てっきり職員の誰かが届けてくれるのだと思っていたら、午後4時過ぎチャイムが鳴った。
出てみると、市長その人が玄関に立っていた!
恐縮の極み……。



こういう人が原発立地隣接地の市長に3選した。
原発は立地市町村(議会と首長)の賛成と都道府県の賛成があれば立地できてしまう。
一度事故が起きれば災厄は広範囲に及ぶ。
いや、世代を超えてその災禍が伝わる場合もある。
人類は放射能除去装置を持っていない。
後処理さえ“トイレのないマンション”同様、方法を知らない。
こんなものを“地元”の意向で決められてはたまらないが、今のところ法律ではそのような手順になっている。
西原さんのような市長がいるうちに法律を変えるか、
世間の空気をもう一度「原発はいらない」に染めていかなければならない。

〈写真は2013/10/28 静岡新聞朝刊から〉




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【筆者から】
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ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。


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