『秀樹さんが教える まだまだ奥が深い Facebookの教科書』
の「あとがき」を書いた。
予想外に長くなってしまった。(反省)
近日中にリリースする予定。
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やっと書き終わりました。
Vol. 1、2、3を通して読んでいただいた方、ほんとうにお疲れ様でした。
Facebookが「書けば届く」という当たり前のメディアなら、どんなに楽だったことでしょう。
投稿しても友達に届いていない場合がある、その逆に、頼まれもしないのに友達の近況情報がバンバン入ってくる、奇妙なメディアだなぁ――というのが、この本を書き始めたきっかけです。Facebookは実にわかりにくいソーシャルメディアであり、好奇心を刺激されました。
書きたいことはあらかた本編にまとめましたが最後に3つだけ、“蛇足ながら”付け加えさせていただきたいと思います。
実名、クチコミ、ビジネス利用についてです。
まず、「ネットワークに実名で書く」ということの重大さについて。
私たちは、ほんとうは大それたことをしていると思います。
パソコンやスマートフォンに文章を打ち込んで「公開」で投稿することは、人々が行き交う雑踏でラウドスピーカ―で叫んでいるのと同じです。もしくは大講堂で数百人、数千人を前にスピーチすることと。
こういう経験は、有名人やスター、政治家でもない限りふつうはしません。彼らでさえ毎日毎日、話すごとに一挙手一投足が注目されるなんてことはないでしょう。ところがFacebookでは、ごく普通の人にそれが起こります。これは大げさに言えば、人類史上初の経験であり、突如として出現した状況といえましょう。
でも、誰も気にとめていません。
「Facebookはリアルと同じ」などといわれますが、とんでもない。リアルなら個人が影響力をもつ範囲は限られますが、Facebookは無限かもしれないんですから。この点、心してかからないとまずいですよ、というのが1つ。
2つ目はクチコミです。
クチコミが起こるメカニズムについてはVol.1で詳しく説明しました。しかし、その原理原則のようなものを会得したとしても、クチコミを操作して自由自在に情報拡散をする、なんてことはできにくい。
インターネットや本を探せば「クチコミを起こすノウハウ」は、いくつでも見つけられます。でも、「自由自在」も「鉄板の法則」もありません。よしんばAさんが成功したとしても、同じ方法でBさんが成功するとは限りません。いや、もっといえば、Aさんのきょうの成功があすもまた通用するとは限らないのです。Facebookは実にやっかいです。
強いていうなら、成功法則はたった1つしかありません。
「コンテンツを磨きぬく」
これです。
<Facebookは“読む人にとって価値のある情報”を届ける>
これがFacebookでクチコミが起こる原理ですが、私はこの本を書き上げる寸前にこの当たり前ともいえる事実に気がつき、ハッとしました。
もう1度いいます。
<読む人にとって価値のある情報>です。
私も何度もFacebookに投稿しています。
いつも記事が拡散してくれればいいと願っていました。自分の都合です。「多くの人に知ってもらいたい」というのはこちらの欲。読んでくれる人が欲するものではなかったのです。
クチコミ爆発が起きたのは「偽アカウント」のことを書いた時でした。ユーザーの多くがザワザとした不安を感じていたのでしょう。「Facebook友達の個人情報狙いだから“カギをかける人になりましょう”」と写真管理の徹底を提案しました。同じテーマは過去に2回書いているので特に力を入れて書いたわけではありません。ところが、この記事は多数に表示されクチコミ比率(ファン以外の人のニュースフィードに表示された倍率)は90倍を超えました。
たくさんのいいね!、コメント、シェア。「写真拡大」や「もっと見る」のクリックなどなど、多くの要素が絡んだ結果だと思いますが、これを次の投稿でも続けるのは至難の業で、私には無理なことでした。
それで思ったのは、「価値があるとは、“読み手にとって価値がある”であって、自分の都合や願望とは関係ないんだな」ということでした。
コンテンツを磨くとは、自己宣伝や自分の能力の誇示ではなく、相手が「なるほど」「ためになる」「読んで得した」「感動した」と自然に反応をする記事を書くということなんですね。しかもそれを「続ける」ということ。これはけっこう至難です。
だから私は何度も「励ます意味でいいね!を量産してください」と、Facebookや今度の電本でいい続けているのです。
現実的には、多くの人にとっていいね!を数多くもらうというのは高いハードルだし、思い通りにはいかないものだと思います。
でも、これも覚えておいてください。
いいね!の数が少なくても、見ている人はかなりいるのだということを。潜在読者はいいね!の何倍もいるんです。いなければクチコミ爆発なんて起きません。書き続けていれ、ばチャンスは誰にでもあるでしょう。
最後に「Facebookのビジネス活用」についても触れておきます。
Facebookを私は、自分の出版ビジネスの中央に置こうと思っています。その点、多くの方々が指摘しているように「Facebookはビジネスに使える」を否定はしません。
しかし、「Eコマース(ネット取引)の中核に置く」というのは、この本で書いてきたことと明確に違うと思っています。ブログ、メルマガ、ツイッター、Youtube(動画サイト)などと連携させればそれも可能だとは思いますが、そこには踏み込みませんでした。
違う方法論を書かなければならないからです。
そしてそれは、私が今回書きたかったことではありません。
この本で扱っているのは「交流」と「ブランディング」です。
Vol.3で紹介した中で、Eコマースの発想をお持ちなの“竹虎4代目”の山岸義浩さんだけです。その山岸さんもFacebookページで展開しているのは、“竹のブランディング”であって、商品の売り込みではありません。独特の語り(土佐なまりの短文)と美しい写真を武器に、虎斑竹の魅力を伝えるだけす。商品ページへの誘導もしていません。広告はそのコンテンツの表示率を高めるために使っているだけ。Facebookからの実入りを今はほとんど度外視して、「交流できるのがすごい」と喜々としていました。Facebookマーケティングのまことに正当な方法だと思いました。
Facebookは勝手に個人をブランディングしてくれます。
商圏は地域に限られているのに、ネット内の知名度を圧倒的に高めて、商売(仕事)でも地域活動でも大きな成果を出している代表が熊本の橋本由里さん。動画を駆使している福岡の吉積佳奈さんも同じタイプです。
純然たる客商売で、看板のない店を経営する岡村佳明さんは“岡村さん個人のファンづくり”に成功しています。若手のネット系経営者の宮川千明さんの存在も、個人がFacebookの中でスター化していく典型です。ゼロからスタートして2年足らずで、拡散しにくいFacebookでこれだけの知名度を獲得するというのは、並みの戦略ではありません。
交流重視によって独特の立ち位置を確保しているのは、静岡の安部恵さん、山崎なるさん。川根あけぼのの榊原広之さんやコバンさん(山本剛史さん)も同じ系譜です。
これらの人たちは(竹虎さんを除き)、「ビジネスはFacebookページで」といわれる中で、個人のページでブランディングに成功しているのです。Eコマース的な発想から離れるなら、無理してFacebookページを使わなくても、Facebookを活かす道はあることを示しています。
ビジネスとはやや離れたところで“巨人”が生まれています。
佐賀県武雄市の樋渡啓介市長は地方自治の世界の著名人ですが、Facebookでさらにそれを確固たるものにしました。今や記者たちは樋渡さんのFacebookとブログを見ないわけにはいきません。マスメディアより先にソーシャルメディアでニュースが発信される、そんな状況を創りだしたのです。
Facebookをテコに社会的なムーブメント、コトを起こすことに成功しているのが映画「ペコロスの母に会いに行く」の村岡克彦さんたちだし、ドキュメンタリー映画「うたごころ」の榛葉健監督です。拡散しにくいFacebookですが、強いつながりをつくります。つながりが連鎖すれば拡散以上の大きな力が生まれることを立証しました。“アラブの春”のような政治性こそありませんが、ソーシャルメディアが社会を動かし得るシステムであることを世に示しました。
Facebookは「ビジネスに使える」以上のものです。
河野實さん、清岡隆二さんはFacebookの中で昔の自分に匹敵する自分を取り戻しました。飯田計さん、村上文一さんの生き方はFacebookとの出会いによって変わりつつあります。糸永伸哉さんに寄れば、Facebookは高校生の就職活動にも力を発揮しています。
Facebookのテーマは「ビジネスに使えるかどうか」、そんな底の浅いものばかりではありません。
一歩を踏み出すとあなたの人生を変えてしまうかもしれない。
Facebookは奇妙で気難しく、でも承知して使えば想像以上の世界を開いてくれる不可思議なツールなのです。
ハーバード大学の一学生が「すごいと言わせたい」一心で作った仕組みが、こんなドラマを世界中で引き起こしているなんて、当の本人も想像もできないことでしょう。
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【筆者から】
このブログの元になっているのはFacebookへの書き込みです。
主にFacebookページ「ジャーナリスト 石川秀樹」に投稿しています。
ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。

