★叱られて学んだ「人生烈々」 Facebook本の“取材記”から | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。



1月から書き始めていたFacebookの本が、ようやく脱稿した。
馬力がなくなって来たのか、思いがけず10ヶ月もかかってしまった。


全国を取材した。
忘れられない人がいる。
僕の取材は“失敗”から始まったのだった。


千葉在住の大物を東京で取材させてもらうことになった。
車で2時間、そう計算して余裕を見て2時間半前に家を出た。
甘かった。首都高の渋滞につかまった。
結果、30分の大遅刻。


河野實さんは東京駅前の「オアゾ」で辛抱強く待ってくださっていた。
取材は2時間以上に及んだ。
いろいろな話を伺った。
河野さんは経済誌「経済界」で記者から副社長にまで上った人。
米「フォーブス」日本版の嘱託記者でもあった。
それより何より、昭和30年代の大ベストセラー『愛と死をみつめて』の筆者である。
「ミコとマコ」のその「マコ」であった。

ジャーナリスト 石川秀樹


このことは、取材時にはもちろん知っていた。
しかし本人のFacebookのウォールをいくら見ても、一言半句も「マコ」に触れていない。
若い時節の大成功は、後の人生に複雑な波紋を残すのだろうか……。
そう思ったので根掘り葉掘りは聞かなかったのだが、
その話はごく自然に取材中の話題になった。


しかし、河野さんは「過去の事績」で語られるべき人ではない。
僕が取材したいと思ったのは、ウォールからとてつもない熱を感じたからだ。
70歳を超えている人の“仕事”とはとうてい思えない。
どうしてそんなモチベーションを持ち続けることができるのか。
インタビューでさまざま伺って、自分なりに了解できた。


お礼を申し上げて、取材が終了した。
その後、都内をいろいろ見て深夜遅く帰宅、そのまま床に就いた。
翌朝、河野さんからFacebookのメッセージが届いていた。
それは怒り心頭に発した“言葉のつぶて”だった。


まいった。
「取材をするということは、取材される側の時間をkill or spoilすることだと分かっていない」
まったくもってその通りで、僕は30分も遅着し、冒頭、言葉で謝ったのみで、帰って礼状を書くでなし、メール1本書くだけのこともしなかった。
「失礼千万なブンヤ稼業から足を洗っていながら、その汚れが落ちていない」との指摘。
現役時代、取材先には謙虚に接してきたつもりでいたが、
「つもり」であって、心は上の空であったのだろう。


記事にすることを、きっぱり断られてしまった。
この時のインタビュー中、河野さんは将棋の天才升田幸三(故人)とのエピソードを話していた。
思いつきの手土産で烈火のごとく怒らせてしまった失敗談である。
その名誉挽回の話が実に興味深かった。
それを思い出し、僕なりに工夫して二枚煎じを行ってみたのだが……。
手は見え透いており、怒りを解くことはできなかった。


それっきりで終わるところが、僕は河野さんのウォールを注視し続けたし、
(コワくてコメントはできなかったが)
河野さんも時々は僕の投稿も読んでくださっている気配が感じられた。


それから1年たった。
やはり河野さんの話を外したくはなかった。
Facebookでまったく新しい人生を切り開いているからだ。
Facebookへの愛を感じた。
近ごろはますます執筆が濃く、深くなっている。
だから、とにかく原稿にした。


読んで心が動かないなら、僕の思いが足りないということだろう。
そのときは、顔を洗って出直すしかない。
原稿をEメールでお届けした。
怒られると思ったが、原稿にていねいに手を入れ送り返してくださった。
つっかえていたものが降りたような気がした。


Facebookはこんな出会いをもたらしてくれる。
マスメディアのことしか知らずに「書くこと」をリタイヤしていたら、
つまらない人生に終わっていたと思う。
還暦過ぎても人間が未熟であるのは恥ずかしいが、
幸いにして叱ってくれる人がいた。


人間は古希を過ぎても古びはしない。
興味と関心があり、烈々とした気迫を持ち続けている限り。
河野さんを見ていると、自分なぞ鼻たれ小僧のように感じられる。
河野さんのFacebook三昧の一端でも表現できていれば、幸いである。



本は結局、400ページになってしまったので3分冊にし、
まず電本(電子書籍)として近日中にリリースしたいと思っている。
1部は「基本編」、2部は「仕事に活用編」、
3部はFacebookを楽しく、かつ真剣に使っている人を紹介している。
河野さんの記事はその巻頭に配した。




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【筆者から】
このブログの元になっているのはFacebookへの書き込みです。
主にFacebookページ「ジャーナリスト 石川秀樹」に投稿しています。
ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。


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