★勇気なき組織の必然、「みずほ銀」の失態 | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。



なにがスゴイって、楽天の田中将大投手だ。
ついに開幕から24連勝、
負けなしでシーズンを乗り切ってしまった。
空前絶後であろう。
今後、自分だって破れない記録ではないか。


OECDの大人の知力調査のニュースもいい。
「読解力」「数的思考」の分野で、
日本人が世界一だそうだ。
子供の学力が「落ちた落ちた」といわれ続ける中、
「なんだ、やれるじゃないか」と
これも勇気凛凛(りんりん)だ。


と、快挙2つが報じられる中で、
こいつはいただけない。
みずほ銀行の暴力団融資事件だ。
歴代頭取まで、役員全員が承知していたとは。


開いた口が塞がらない!
と言いたいところだが、
実は「やっぱりな」と思った。
僕だけではない、
大方の人は“想定内”だったのではないか。


ジャーナリスト 石川秀樹



気兼ね社会、
サラリーマンが上しか見ない日本で、
まずいこと、あってはならないが解決困難なこと、
こんなものはうやむやにして放置する、
というのが“常識”だ。


「役人根性」というが、
今の民間企業のサラリーマンは、
お役人ほどの勇気も揮いにくい。
誰もリスクテイクをしてくれない、
会社自体がいつ倒れるか知れない。
利巧なものは“やっかいな案件”なんぞに手を触れない。


そういう勝ち残り組が、
銀行でいえば頭取、役員たちだ。
こんな連中ががん首並べたって、
解決策の1つ、
断固とした「解決の指示」など、
出るわけがない。
出してできなければ、
指示した者の責任になるわけだから。


「半沢直樹」でよかったのは、
役員会の様子が映ったことだ。
(無論フィクションで戯画化されているが)
今度の案件も役員会に報告されたそうだ。


当時の西堀利頭取は聴いてもなんの指示もせず、
現在の佐藤康博頭取に至っては
金融庁検査で問題が指摘されて初めて
「問題だと認識した」というのだから、
日本のエリートの頭脳はOECD調査を行えば、
きっと先進国最下位の部類だろう。


上に気兼ねして生きるサラリーマン諸君よ、
トップといえどもこの程度である。
「問題だ」と感じたあなたは、
歴代トップの連中よりはるかにまともだ。


相手は暴力団。
そのカネを止めたら何をされるか分からない。
それができるとしたら、
上司からの不退転の指示があった場合だ。
銀行挙げての担当者へのバックアップと
警察との密接な連絡、
家族を疎開させて、行員に指一本触れさせない。
そんな態勢がなければ、
暴力団と縁を切ることなどできない。


一に掛かって、トップが肚(はら)をくくり、
組織をその方向に向かせることができるかだ。
「みずほ」はそれができなかった。
「半沢直樹」を観ていて不可解だったのは、
「金融庁がなんであんなにエライの?」だったが、
こういう事件が明るみに出ると、
「やっぱり必要だったんだ」と分かる。
勇気なき小物たちを追い立てるのは
監督官庁の指摘という“非常事態”しかないのだから。


頭取たちは頭を下げているが、
謝っても問題が解決するわけではない。
前途多難だろうとお察しする。
いや、このエリートたちにではなく、
最前線で苦労されるであろう普通の行員たちに。


思えば、半沢直樹が出世できるような組織、
それを創ってこられなかったから今の「みずほ」がある。
みずほを「今の日本」と言い換えてもいい。


現場で勇気をもってコトを行う人を大切にしない、
むしろ「変わり者」「偏屈者」のレッテルを貼って排除する。
スイスイ要領のいいだけの者を重用してラインに据える。
そんなバカな人事しかしてこないから、
日本の企業の足腰が弱くなるのだ。


と、評論家のようなことは誰でもいえる。
人を育てる教育界だって、
学力テストの点数1つに右往左往してしまう。
敢然と悪をただすことを期待される(?)メディアだって、
あちらこちらに気兼ねしたような記事がはん濫している。
「処世」を知らなければ幹部になれないのも同じだ。


「ならぬものはならぬのです」
こう言い切れる“会津人魂”が
とても美しい奇跡のように思える。


揺るがないのは勇気である。
正義を貫くの葉、もっと重い勇気である。
勇気をたたえる社会であってほしいと思うのです。

<写真は読売新聞 2013/10/9>



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【筆者から】
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主にFacebookページ「ジャーナリスト 石川秀樹」に投稿しています。
ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。


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