★「一票の格差是正」その正義に異論はないが、『でもね……』地方の声も聞いてくれ | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。


あまりこの話題に触れたくなかったのだが、やはり書かずにはいられない。
「一票の格差」の問題だ。


3月25日、広島高裁が昨年12月の衆院選広島1、2区について「違憲で無効」と判決を出して以来、一気に注目を集めた。

ジャーナリスト 石川秀樹-一票の格差訴訟の広島高裁


「一票の格差」は今までさんざん、衆院選でも参院選についてでも「違憲判決」が出るが一向に「選挙無効」とはしてこなかった。国会の立法権を尊重するとかで、いわゆる“事情判決”の法理を持ち出して、司法は及び腰で対処してきた。
それが「無効」だ。
国会の無作為(つまり、やる気がなかった)に業を煮やしていた多くの心ある国民は、拍手喝采した。


それは当然といえば当然だ。
議員ときたら、おのれの“就職”のこととなると我利我利亡者、恥も外聞もなくおのれの都合を言い立てて、一向に選挙区改革が進まない。
それが高裁とはいえ、怒りの無効宣言だ。
これで国民の溜飲が下がったとしても無理はない。


その結果、安倍政権も重い腰を上げて、「衆院選挙区画定審議会」の「0増5減」の勧告案をのもうということになった。
これで「一票の格差」は1.988倍に圧縮されるという。
新聞はこぞって「それでは足りぬ」という。
限りなく1対1に近づくよう国会は努力せよというのである。
猫も杓子も、鬼の首を取ったかのように勇ましい。
なだれを打って、「一票の格差是正」という大正義に向かって錦の御旗を振る。


そういう光景を、地方に住む私は複雑な思いで見つめている。
そりゃあ、正義といえば正義だろう。
同じ人間だもの、一票の価値に軽重があってはならぬ。
100%それは正しい。


『でもね』と私は思うのである。


都市の論理ばかりで進んでしまって、日本は大丈夫なんですかねぇ。
「東京一極集中」! 
今さらいい古された言葉だが、それはひどいものだ。
政治・経済はおろか、文化・学術・芸術、観光、人財……のすべてが東京へ東京へ。
原発立地がなぜ地方、それも辺鄙な地方に限って在り続けるのか。
不便、危険、汚いものは地方に在り、都市はその上にあぐらをかいている。
人口も圧倒的に大都市に偏在だ。
地方都市は市の人口要件「3万人」(市町村合併促進で極度に甘くされた)を割り込み、あるかなしかの商店街もシャッター街と化している有様。
そんな状況の中で、「お前ら人口少ないんだから、定数減らせよ」である。


わざとこんな書き方をしているので、無用に地方都市を卑下し、ばかにしているように見えるかもしれない。
それは本意ではない。
地方の中にも魅力的なまちはあるのである。
豊かで住みやすい、人のぬくもりのあるまちにと懸命に頑張っている人たちがいる。
だからことさらに、地方の被害者意識を言い立てるつもりはない。
東京に一極集中し、地方の中核都市も膨れ上がり、地方の中に格差が広がり、地方の中のさらに地方では「限界集落」などと(差別用語だと思うのだが)いわれる地域が急増している。
それもまた、人間と同じように、日本という国が成長し老いて朽ち果てていくひとつの過程であるのだろう、「仕方ないじゃないか」といわれればそれも認めよう。


しかし、しかしながら、私は地方が捨て置かれることに我慢がならない。
たかが一票の格差、それを是正するのは正義だ。
やればいい。
国会議員の尻を叩け、怠慢を責めろ。


しかし心ある国民は、それをやればやるほど地方は発言力もなくなり(今だって代弁されていないが)疲弊していくという事実を忘れないでもらいたい。
むろん、地方再生は選挙権の問題で左右されることでない。
しかし考えてもみよ、人口の十中八、九までが都市部に偏在し、公平に1票の価値を振り分ければ、一か二かしかない地方の田舎は朽ち果てていくしかないだろうことを。
今日、東京に在住する人たちも、その多くは地方から移り住んだ者たちだ。
置き去りにしてきた田舎は、今どのような状態にあるのか。
ぜひ、考えてもらいたい。


新聞よ、正義を振りかざして「一票の格差是正」をいい募れ。
しかしその一方で、その格差是正は“地方を殺さない”政策と一体でなければならない、ことを忘れないでほしい。


財政力があり、人もカネも文化も知恵も、そして圧倒的な政治力さえ兼ね備えている「東京」は、この際、独立させたらどうか。
その余の地方が連合して「新しい日本」という国を創成させるのだ。


夢物語のようだが国民よ、これはすでに現実に起こっていることである。
「東京」が国家でないだけであり、実態、実力は並みの国家を超えている。
それが地震大国、火山帯国の中央に君臨している。
たった独りで、代替機能を分散することもなく、ただ集めに集めあらゆる機能を増大させている!
こんな“かたいびつ”な巨大都市はあってはならない(本当は……)。
東京が国家なら、そして愚かでないなら、機能の多くを地方に分散し、健全な生き残りを図るだろう。
それは地方再生にもつながるリーズナブルで公平な施策だ。


一票の格差を是正するなら、打ち捨てられる地方のために、大幅な“主権移譲”を行ってもらいたい。
捨てられるための格差是正などいらない。
地方が主権国家並みの自由裁量権を持つ、そういう改革になるよう、この一票の格差是正騒ぎの折、地方から声を上げたのである。





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【筆者から】
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ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。


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