★浜岡原発防波壁かさ上げ 新聞各紙の見出しににじむ思惑 | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。


中部電力がきのう、浜岡原発の海岸沿いに建設中の防波壁(総延長1.6キロ)の高さを18mから4mかさ上げし22mにすると発表した。
それを受けての朝刊各紙の見出しがおもしろい。
新聞社も人の子、“事件”に対する思惑がにじみ出るのだ。


まず日経新聞。「静岡経済」のページに

浜岡の防波壁4㍍かさ上げ
津波19㍍試算に万全策
中部電、再稼働に備え
地元の不安に配慮


どうだ、見たか。これで文句のつけようはないだろう、といわんばかりのはしゃぎょうだ。
見苦しい。

hidekidos かく語り記-浜岡原発と防波壁



朝日新聞は夕刊の一報を受けて、13面にこう書いた。

浜岡原発防波壁 高くしても浸水
最大2㍍ 南海トラフ試算


壁を22㍍にすれば津波は壁を越えないが、取水槽から水があふれる、と新たな問題を指摘した。そして「静岡版」では

>壁かさ上げの評価 知事・首長ら慎重
再稼働と直結しない/安全性判断できない/市民理解得られぬ
御前崎市長は「安心感」評価
 


地元の静岡新聞は、1面は客観見出しに終始。
だから一読して、『なんだ、静岡新聞は変節しちゃったの? あれほどきちんと原発の危険性をキャンペーンしていたのに』と思ったくらいだ。
しかし、社会面トップではいうべきことはいっていたので、少しホッとした。
まずは2つの見出しを読み比べてほしい。

(1面)
浜岡 22㍍防潮堤決定
浸水防止策を強化
中電、県などに説明

(別立てで)
中電社長「安全性高める」

(社会面)
浜岡防潮堤かさ上げ
「安心感増す」「リスク存続」
地元4市長に温度差


1面と社会面を合わせて読めば、まあ何とか「これで浜岡原発の安全性が保障されたものではない」というニュアンスが伝わってくる。
新聞記事や、記事を映す「見出し」には、新聞社の姿勢や記者・編集者の思いが反映されるものだ。
おおむね記者や編集者は現場にいるから、原発に対しては心情的に“黒”または“灰色”と感じている傾向がある(と、僕は勝手に希望的な観測を抱いている)。
しかし編集者は地位を上がれば上がるほど、社の体質に染まっていく。
「社の体質」とは、経営のことを考える、「新聞社だって一民間企業だ」という発想に立つということ。
つまり、スポンサーのことを考えるということだ。
強弱はあるが、経営を考えない新聞社はありえない。
だからこそ大新聞だって原発ムラの大ウソ「原発安全神話」なるものを大威張りで担いできたのだ。


今も正直に「財界寄り」が見えるのが日経新聞だ。
見出しを読んでもらえばそれは明白だろう。
一方、地元の大企業中電を抱える中日新聞・東京新聞は反原発に転じている。
(残念ながらわが家は中日を取っていないので、きょうの見出しは不明だが)
ことほど左様に、日本の新聞といえども「厳正中立」「客観報道」などということはあり得ない。
正しく事実を伝えようとしても記者の思いや、時には社の都合が紙面には現れる。
だからそこは、読む側が心して「この中で、事実は何なのか」を読み取っていかなければならない。
うのみは禁物だ。


僕が読み取る事実は、
①防波壁をかさ上げすれば津波は防げる、
②浜岡原発の危険性は「津波」だけではない(東海大地震の震央にある)、
③よって「津波対策完了=再稼働了解」ではない
―だ。



日本列島の中央、太平洋側に僕らはとてつもなくやっかいな施設を抱えてしまった。
新聞は、まずもってそのことを肝に銘じたうえで、浜岡原発を報じてほしい。




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【筆者から】
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ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしていますが、ジャーナリストであり続けたいと思っています。また、61歳で行政書士の資格を取り今年8月に開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」として熱く語り続けています。
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