「経営維新塾」の山田壽雄さんと出会い、ミーツ出版は加速した | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。



「山田経営維新塾」を受講した。
毎月第2金曜日、市内のホテルにカンヅメになって講義を受ける。
年12回。その最初の講義に遅刻する人がいた(無論、やむを得ない事情があったのだが)。
塾長の山田壽雄さんは第1回、はじめの始めの講義だからピリピリしている。


スタートの時間が来た。
塾長は怒りを抑えながら僕ら塾生に、「どうしますか?」と聞いた。
「時間が来たから始めますか?それとも、全員来るまで待ちますか?」
一瞬、『塾長はどっちを望んでいるんだろうか』と考えた。
重苦しい沈黙が続いた時、1人が「待ちましょう」と言った。
ホッとした。僕も『それが正解』と思った。


◆山田壽雄さんと運命的な出会い

僕がこの席にいるのは、不思議な感じさえする。
山田壽雄さん。川根の製茶メーカー「山田園」創業者
らつ腕社長だと聞いていた。
初めてお会いしたのは昨年12月23日、青葉通りにある事務所でだった。
第一印象。怖い人、変じて今は温厚が身についているが、やはり怖そうな…笑顔
にこやかに会話していながら、すべて見透かされているような。


hidekidos かく語り記


事務所に赴いたのは、若い友人から「おもしろい人がいる」と聞いたからだ。
1回10万円の経営塾を開くのだと言う。
「10万円!?」(バブルの時代じゃあるまいし…)
しかし、会ってみたいと思った。
『何しろ、途方もない企画。会わなきゃ損だ』


事前にその人の著書を友人から借りた。
『23年連続で増収増益 小さなNo.1企業の秘密』と言う。
一読、何カ所かに付箋を貼った(僕は滅多にそんなことはしないのだが)。
「商売とは人づくりだ」
「社員さんは原石、磨くために仕事を任せる」
「お客様より社員さんを大事に」
「脳みそが汗をかくほど考えよ」
「失敗は成功への第一歩」
「企業は人間を幸せにするために存在する」
「顧客第一、利潤第一、社員さんも第一」…などなど。


列記すると事もないと思われるかもしれないが、
行間から伝わってくるのは「伝えたい」という熱意である。


僕は素直に読みとおしたが、暑苦しく感じる向きもいるのではないか。
言葉にすると簡単だが、これを実践してきたとすると社員は大変だったに違いない。
『しかし、本気でこれをやってきたとすれば、この人はすごい』と思った。


◆社員さんを磨きあげる経営

中小企業に“人材”など来ないと言う。(確かに一流官庁に行くような人は来ない)
ではどうするか。「磨きあげる」と言うのだ。
実際に、人間と言うのは、学校の成績や氏素性だけでは測れない。
社員に仕事を与え、使命を課し、しかも完全に任せてしまう。
リスクは高いが、人間の伸びシロも想像以上だ。
結果、たたき上げ社員の中から自分の後継者が育ってきた。
社長を譲り、経営の第一線から退いたのは55歳のときだったと言う。


早すぎる。
60歳では会長職も辞めて、むしろ他社の経営指導に力を入れ始めた。
聞けば、息子さんはちゃんと山田園にいる。
優秀な人らしい、社長の器。
なのにあえて他人を後継者に充てた。


社員が奮いたつ、新社長にカリスマ性が求められないから潰されることもない、
だから安定軌道に乗りやすい…。
『なるほど』の理屈だが、実践する人は少なそうだ。


◆「本気」を試されて僕はその気になった

初対面でここまで話を聞いて、『この人の話、1年間聞いてみたい』と思った。
そんな気持ちを隠して、僕は「2冊目を書かないんですか?」と聞いた。
「実はもう書いてありますよ。折々書いたので直さにゃなりませんが」
内心、慌てた。
『でも、いきなりうちには来ないだろう』
すると、「お願いできますか?」と来た。


不思議な縁である。
出版社は、設立しようとは思っているが、この時点で影も形もない。
同時に、行政書士の試験も終わったばかりで、合否定まっていない。
「塾は一般社団法人でやりたい。そちらの登記も手伝ってください」


これは何と言うのだろう、話がうますぎる
初対面でここまで信用しちゃうの?
からかっているのではないとすると、『そうか、本気を試しているんだな』。
となると、後には引けないではないか。
「分かりました、やらせてもらいます」と僕は即答した。


『大丈夫か?おい、おい』と思わないでもない。
こちらの態勢のことだ。
無計画にもほどがある!
まだ印刷会社の協力を取り付けただけ。
本の流通だって大変そうだ。その目途もたっていない…。


しかし、元々計画なんぞ綿密に立てたところで狂いが出るに決まっている。
ならば縁(=偶然)に任せてみるしかないではないか。
『向こうはリスクを冒(おか)して、何の実績もない者を信用すると言うのだから』


◆出版を引き受けたものの態勢はゼロ

こうして、新聞社退職以前に僕の方向性は定まった。
本当は、数か月間失業保険をもらいながら、設立準備をしようと思っていた。
しかし、会社を去るその日までルーティンワークに追われ、準備はできず、
辞めてからすぐにハローワークを訪ねると、
「開業準備にかかれば保険は出ません」と、すげなく返された。



『やれやれ、39年間も雇用保険を収めたのに国からの支援はなしか…』
仕方ない、きっぱりあきらめる他ない。
初手からつまづいた。
しかしこんなことは序の口でさえなかった。
書籍流通の要を握る取次会社との交渉は難航した。
有力書店さんの協力も求めた。それでも…。


さらに設立の登記、書籍コードの取得、電話回線、その他備品の購入と、雑事が続く。
のんびり、ゆっくりのつもりが、
すぐ本を作らなければならなくなって、越えなければならない山が多すぎて、
この間、息せき切って走り続けた感じがする。


疾風怒濤のような1ヶ月が過ぎ、何とか流通の問題も解決した。
本当に無計画だった。
あったのは「思い」だけ。そして怖いもの知らずの突貫精神
助けてくれたのは、みな周りの人たちである。
まだその人たちに、満足にお礼も言えていない。


そして今、本の初刷りが完了した。
表紙カバーももうじき最終のものが決定する。
そんな中での維新塾スタートだった。


◆鬼コーチを泣かせた『感謝の手紙』

午前中はさすがに塾長も塾生も堅かった。
しかし昼食後、犬塚敦統(あつのり)さんという外部講師の話を経て一気に引き締まった。
犬塚さんは愛知県安城市の七福醸造株式会社のカリスマ会長。
環境整備を通じて自分たちの心を磨く事」が信条。
と言っても、一般の人には何のことやら分からないだろう。
毎朝トイレ掃除をしている、と言うともっと誤解されそうだ。
(この人のことを書き始めると、もう1つノートを書かなければならなくなる)


「トイレ掃除=心を磨く」経営論(むしろ実践)は、一部では知られている。
しかし、何しろ犬塚さんは「トイレの水を飲める」くらいまで磨き上げる。
これがなぜ社員教育に通じ、会社を変える力となったかは、
実際に講義を聞いてもらわないと分からない。


塾生は自分を変えたい会社を変えたい一念でここに参集している。
だから刺激的な話を聞いて、空気が引き締まり、熱気を帯びたことは確かだ。
その後、山田塾長は僕らに「感謝について」を書かせた。
謙虚になりきれない僕は駄文をしたためたに過ぎなかったが、
他の塾生、12人の書いたものは素晴らしかった。
希望して6人が、書いた手紙を読み上げた。
鬼のような気迫を見せていた山田さんが、必死に涙をこらえるのが見て取れた。
僕も同じくである(人前では泣かないが…)。


山田さんは塾が始まる前、「全身全霊をぶつける」と言っていた。
それでも僕は『お手柔らかに』と思っていた。
でも、1日で考えが変わった
素晴らしい仲間たちである!!
「この人たちのため、何かをしたい」と思ったのである。


◆山田マジックか、塾生の力か

山田さんが「維新」という大げさな名前を塾の名称にしたのはなぜだろう。
1回聞いただけでは分からない。
しかし7時間半のカリキュラム全体を通じて、みな何か変化したようだ。
問題は、それを持続させることができるかどうかだと思う。
虎視眈々とそのための策を山田さんは、脳みそに汗をかくほど考えているだろう。


懇親会で、誰言うとなくこんな会話が交わされた。
「こういう仲間ができたってこと、10万円分の価値はあったね」
『おいおい、そりゃあ、塾長を喜ばせすぎだぜ』僕は心の中でつぶやいた。


毎回、結果を問われるのは大変なことだと思う。
しかし山田さんはやり抜くのではないか。
この日の講義の何が良かったのか、実はよく分からない。
それでも結果として、いつの間にか “同志的な結束”が皆の中に生まれている。
塾長マジックと言うべきなのか、それとも僕らがスゴイのか…。
申し遅れたが、塾生は20代から60代まで、職種も経験も違う人たちである。


◆………………………◆

ミーツ出版株式会社の第1号の本は
『23年連続増収増益 “非常識”社長の「維新」を起こす経営』と言う。
山田経営維新塾のプレ講義のような中身だ。
奇跡のような出会いがあって、わが社のデビュー作となる。
5月中旬には書店に並ぶので、ぜひ手にとっていただきたい。




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