奇跡のクルマ | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。

僕がいま乗っているクルマはレクサス。

トヨタの高級車だ。僕には似合わない。

それで震災を機に、燃費のよいハイブリッド車、プリウスに替えようと思っている。



こんな話をする気になったのは、新車がなかなかやって来ないからだ。

津波の影響で部品の製造が遅れている。

ツキのないクルマは買い替えに至ってもツキがないのか…



そう、僕の所有車レクサスにはツキがない(と、ずっと思ってきた)。

購入したのは06年4月である。

編集局長になり丸2年、得意絶頂のときだった。

4ヵ月後、僕は編集局長をクビになった。

hidekidos かく語り記-レクサス


もともと好きで買ったクルマではない。

試乗した家内が内装を気に入り、それで購入を決めた。

僕としては、スポーティーでコンパクトな車の方がよかったのだが。

ところが、乗り合わせた友人・知人は例外なくこの車をほめる。

人間をほめられたことはないが、車だけほめてくれるのだ。



そんなこともあって、長いことこのクルマを好きになれないでいた。

しかし先日、レクサスが夢枕に立った。

泣いているのである。

売られてしまったことを知ったのだろう(下取りに出しているからね)。

ヘッドライトを曇らせながら「私のせいですか…?」と小さな声で言う。



僕は考え込んでしまった。

編集局長を外れたこととレクサス購入を関連付けたのは、こじつけである。

そこに何の因果関係もない。

おっしゃる通り、彼は無実である!



さらに、本当にツキがないクルマかと言うと…

実は、編集局長から出版局長に転出した直後から

僕は右肩がとても痛くなり、動かせなくなった。

続いて、全身にかゆみが出てきて体中をかきむしった。

さらに、腰が痛くなり11月には歩くことさえ困難になった。



治ってみれば50肩だし、加齢による皮膚の乾燥症であり、疲労が誘引のぎっくり腰で、

命に別状はない。

別状ないどころか、『命拾いした!』のである。



新聞社に入った以上、編集局長になるか、コラムニストになろうと思っていた。

2つ共にかなえたわけだが、これほどの幸運、ただで済むわけがない。

ほどなくして、考え方の違いにより担当常務と対立するようになった。

激しい口撃(こうげき)にさらされ、じっと耐えた。



吹き飛ばされそうなほどの怒声を浴びたとき、僕は相手の距離の中にあえて踏み込んだ。

『斬れるものなら斬ってみろ、しかし俺はドスを抱いてるぜ』と

ヤクザにでもなったような気分で、殺気をみなぎらせたものだ…。



今にして分かる。その当時のストレスのいかに大きかったことか。

クビになり、とりあえず僕は解放された。

その証拠みたいなものが先の3つの症状であろう。



してみると、レクサスはツキのないクルマどころか、命の恩人ではないか。

考え方一つだなぁと思う。

出版局長になり、僕は本をつくる醍醐味を知った。

仕事が好きになると、そこから引き剥がされる。

次に行ったのは、インターネットのホームページにかかわる局。

しかもトップではない。

やりたい方向に局を動かすことが出来ず、iPhoneアプリをプロデュースして自己満足のタネとした。

ソーシャルメディアの台頭にも局は後ろ向きだった。

ならばと僕は、自らツイッターを使いフォロワーを増やした。



しかし一旦下りのエレベーターに乗ってしまうと、なかなか「上り」はやって来ない。

やがて定年を迎え、今、新聞籍さえ離れ(異分野である)放送局の人となった。

みな、レクサス購入以降のできごとである。



運が逃げてしまったのだろうか。

いやいや、愛車に叱られて僕は分かったよ。

僕はものすごくツイテいるんだ。



編集局長のまま役員になっていれば、行政書士になろうなどと思わなかったに違いない。

ツイッターで10万人のフォロワーを得ることもない。

また電子書籍の興隆を間近に見て、「小さいながらも出版社を」と

思うようなことも絶対になかった。



新聞社人生で僕は一つのヤマを築いた。

「○○新聞の石川さん」と言われることを誇りに思っていた。

だが今は、そんなこと、忘れてもらって構わない。



いま僕には、次への明確な目標がある。

ソーシャルメディア(個メディア)の中できちんとした発信者になること、

法律の国家資格を取り、社会の役に立つこと、

そして、小さくても出版社を設立し本をつくりたい人を助けること。

3つの目標を実現し、もう一つのヤマを築きたい。



レクサス購入以降に起こった出来事が、僕をここまで連れてきた。

ツキがないどころか、君は幸運を呼び、主人の危難を救う奇跡のクルマかもしれないね。



残り少ない愛車との日々を、もうしばらく楽しもうと思う。


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