和を以て貴しと為す
わしは長尾景虎(ながおかげとら)です。
永享10年(1438年)6月…
鎌倉公方、足利持氏(あしかがもちうじ)は長男、賢王丸(けんおうまる)の弓矢の手腕を見ていた。
ズバッ!!
放った矢は的の真ん中を貫いた。
「お見事です!!」
そこに入ってきたのは家臣の一色直兼(いっしきなおかね)だ。
持氏「うむ、見事な腕前になった。」
直兼「公方様(持氏のこと)、賢王丸様もそろそろ元服でごさいますね。」
持氏「そうだな。わしの跡を継ぐものにふさわしくなってきた。」
直兼「では、将軍の義教(よしのり)の一字をいただくことになりますな。」
持氏「……。」
持氏は矢を放つ賢王丸をジッと見つめ、
持氏「還俗将軍の一字などいらぬ。」
直兼「なんと!?ならばいかがされますか?」
持氏「わしには名乗って欲しい文字がある。」
直兼「されど、将軍と揉めることになりませぬか?」
持氏「…憲実(のりざね)を呼べ。憲実に任せるしかない。」
鎌倉公方は将軍の諱の一字をもらうのが、これまでの慣例だったんだ。持氏さんも4代将軍、義持(よしもち)さんの持の一字を名乗ってるね
その頃、憲実は下野国の足利学校に来ていた。
憲実が復興した足利学校は徐々に学ぶものが増えていた。
憲実は円覚寺(えんがくじ)の快元(かいげん)を招いていた。
快元「憲実殿、よくぞ、ここまで復興しましたな。」
憲実「学ぶことで様々な知識をつけてほしいのてす。」
快元「ほぉ、知識を持って、何を望まれる?」
憲実「正しい知識で和平な世にしたい…武士であるわたしが言うのはおかしいと思われるでしょうが…」
快元「いや…武士だからこそ、和の大切さを感じているのでしょう。」
憲実「快元様、ぜひ、こちらに来ていただき、快元様の教えを皆に伝えてほしいのです。ここの長になっていただきたいのです。」
快元「わたしが…」
そこへ憲実の忍び、平太(へいた)が現れた。
憲実「どうした?」
平太「取り急ぎ…公方様がお呼びです。」
憲実「公方様が…急用かな。」
平太「調べたところによりますと実は…」
平太は憲実に耳打ちした。
憲実は驚いた表情をした後、
憲実「快元様、至急、鎌倉に戻らなくてはならなくなりました。もっと話をしたかったのですが…」
快元「憲実殿は関東管領職でありますからな。」
憲実「わたしは鎌倉に戻りますが、快元様はゆるりとしてくだされ。」
憲実は鎌倉へ急ぎ向かった。
『賢王丸様が元服して将軍様の諱をもらわぬとは…公方様は何をされたいのか!?』
つづく…










