和を以て貴しと為す
わしは長尾景虎(ながおかげとら)です。
富士遊覧で駿河国に来ていた将軍、足利義教(あしかがよしのり)は見事な富士山を見ながら、
義教「見事だ、まさに日の本一の山であるな…持氏(もちうじ)は来ぬかの?」
そこにいた義教の家臣が、
家臣「鎌倉から来る気配はごさいません。」
義教「そうか…来た時の手配は出来ておるな?」
家臣「準備は出来ておりまする。」
義教「うむ…将軍の邪魔になるものは殺らればならぬからな。」
鎌倉では上杉憲実(うえすぎのりざね)が持氏の公方館を訪れていた。
持氏は自らの子らと戯れていた。
長男、賢王丸(けんおうまる)と春王丸(しゅんおうまる)、安王丸(やすおうまる)である。
春王丸くんはまだ一歳、安王丸くんは生まれたばかりくらいだよね
憲実「公方(持氏のこと)様、お子様ら皆、健やかに成長しておりますね。」
持氏「うむ、子は宝だ。此度は何用か?駿河から何か言ってきたのか?」
憲実「公方様の出仕を求めて来ましたが…丁重にお断りしております。」
持氏「当然だ。還俗したものを将軍などと認めるわけにはいかぬ。わしは、この子らの為にも鎌倉…東国をまとめねばならぬ。」
憲実「幕府との争いはいけませぬ。」
持氏「憲実、争わなかったから、わしは将軍になれなかったのだぞ!」
憲実「……」
持氏「まぁよい。わしはこの鎌倉を守る。」
持氏の義教を憎む思いは相当なものだったのだ。
持氏は憲実に背を向け、
持氏「…憲実、駿河に行ってまいれ。」
憲実「えっ…私が義教公に会ってよいのですか?」
持氏「大っぴらに行くのではない。忍びで行くのだ。そして、わしの命で行くのではない。あくまで憲実自身の判断で行った…ことにせよ。」
憲実「お忍びで…」
持氏「義教の真意を探るのだぞ。」
憲実「…わかりました。表向きには私は病で伏せておることにしましょう。その間に行ってまいります。」
持氏「頼むぞ。」
憲実は持氏の思いに希望を持ち、密かに駿河に旅立ったのだ…
つづく…









