和を以て貴しと為す
わしは長尾景虎(ながおかげとら)です。
現在の称名寺
上杉憲実(うえすぎのりざね)は称名寺の庭で本を読んでいる女性を見た。
称名寺は神奈川県横浜市金沢区に今もあるお寺なんだよ
その女性は熱心に本を読んでいるのか、憲実や家臣の長尾忠政(ながおただまさ)の存在に気づいていないのだ。
憲実「…もし」
女性「!…あらっ、ごめんなさい。本に夢中で人がいると気づきませんでした。」
憲実「こちらこそ、いきなり近づいて驚かしたようで申し訳ない。そんなに夢中とは、どんな本をお読みですか?」
女性「これは儒教に関する本です。」
憲実「ほぉ、儒教に興味があるのですね?」
女性「はい、学びたいと思って。」
憲実「私の同じですね。」
2人は笑い合った。
数日後、憲実は鎌倉公方、足利持氏(あしかがもちうじ)に呼び出された。
持氏「憲実、いくつになった?」
憲実「15歳にございます。」
持氏「そうか、いい歳だ。初陣も果たし、関東管領として、次は嫁を取らせねばならぬな。」
憲実「嫁ですか…早くはないでしょうか?」
持氏「関東管領を勤めるものとしては早くはあるまい。しっかりと任を真っ当するには、家をしっかりと任せられる女子が必要だ。」
憲実「はい。」
持氏「心当たりの女子はいるのか?」
憲実「…おりません。」
この時、憲実は称名寺であった女性を思い浮かべたが、名を聞いておらず、それっきりだったのだ。
持氏「わしが世話をしてやろう。直兼!連れてまいれ。」
そこに持氏の側近、一色直兼(いっしきなおかね)が姫を連れて入ってきた。
憲実「あっ…!」
姫「あっ!」
憲実は姫の顔を見て、内心驚いた。姫の方も驚いていた。
持氏「どうした?2人とも?知り合いだったのか?」
憲実「あっ、はい。以前、称名寺で一度、お会いしました。ただ、お名前を聞いていませんでした。」
持氏「ほぉ、そうか。なら話は早いな。姫は直兼の娘なのだ。」
直兼「佐奈子(さなこ)と申す。」
佐奈子は座り、頭を下げ、
佐奈子「先日はありがとうございます。佐奈子と申します。」
憲実「こちらこそ…上杉憲実です。」
持氏「憲実、佐奈子が嫁なら申し分あるまい。わしにとっても鎌倉が一体となって嬉しいぞ。」
持氏は上機嫌だった。憲実は佐奈子を嫁に迎えることになったのだ。
応永32年(1425年)2月…
京に衝撃が走った。
将軍、足利義量(あしかがよしかず)が急死したのだ…。
つづく…






