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「ふんっ!!」
海に向かって為朝が放った矢は勢いよく飛んでいきました。
「為朝様、腕はすっかり治りましたな。」
為朝に声をかけたのは、伊豆大島の代官、藤井三郎大夫忠重(ふじいさぶろうたゆうただしげ)でした。
為朝「うむ、折れる前より力が増したようだ。そなたのおかげだ。」
忠重「なんの!為朝様の持つ強さでしょう。飛んだ矢は…見えなくなりましたな。」
放った矢は見えなくなり、海の彼方に消えてしまったようです。
為朝さんは保元の乱で捕えられて肘を折られた上で伊豆大島に流罪になったんだよ
伊豆大島
為朝「ところで、忠重。我に隠して作物を送ったりはしておらぬな?」
忠重「ははっ…もうしておりませぬ。為朝様に怒られるのは懲りましたし、娘の小枝(さえ)からも怒られましたゆえ。」
伊豆大島の所領とするのは伊豆介・工藤茂光(くどうしげみつ)でした。
工藤茂光さんは後に源頼朝(みなもとのよりとも)さんが反平家の挙兵をした時に頼朝さんに加担したんだよ
忠重は代官として年貢を納める立場でしたが、民から無理に年貢を集めており、それを見た為朝がその行為をやめさせていたのです。
為朝「それでよい。作物を作る島の民が苦しんでおるのに、無理矢理取るなど本末転倒だ。」
忠重「はい…されど、工藤茂光が攻めてくるやもしれませぬ。」
為朝「構わぬ、それより、民を苦しめては食べるものがなくなるぞ。その民を守る、それが武士の役目だ。」
為朝は罪人として、伊豆大島に流されて来ましたが、持ち前の明るさと器量で島の民に慕われるようになっていたのです。
為朝は海を見ながら、兄・義朝(よしとも)のことを思っていました。
為朝『兄上…さぞ無念であったであろう…』
平治の乱で敗走した義朝は家臣であった長田忠致(おさだただむね)の裏切りに遭い、入浴中に襲われたのです。
義朝が襲われた湯殿跡
為朝はその報せを忠重から聞いて、再び民を守るために腕を治したのです。
海を眺めていた為朝と忠重の元に…
「夕食ができたよ〜!」
その声は女子でした…忠重の娘で為朝の妻になった小枝だったのです…
つづく







