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「待たせたの〜!わしが秀吉(ひでよし)じゃ!」
大阪城(おおさかじょう)の居間に通された吉川経言(きっかわつねのぶ、後の広家)と小早川元総(こばやかわもとふさ)の前に現れた泥だらけの男が羽柴秀吉(はしばひでよし)だった。
経言、元総とも唖然とした。
その時、
「両名、秀吉様ぞ!」
と一喝の声が響いた。
経言と元総は平伏した。
秀吉「三成、よいよい。こんな格好でびっくりしたのであろう。」
一喝した声の方を見ると、秀吉の若い家臣であった。それが石田三成(いしだみつなり)である。
石田三成
三成さんは秀吉さんの小姓から仕えていたんだよ
秀吉「そなたが元総か、毛利元就(もうりもとなり)公の末っ子だな。」
元総「はい、今は兄、隆景(たかかげ)の養子にございます。」
秀吉「ほぉ、男前じゃなの〜」
秀吉は元総をじっくりと見た。
その後、
秀吉「こちらが経言か」
経言「はい、吉川元長(きっかわもとなが)が弟にございます。」
秀吉「父は元春じゃな。」
経言「はい、父は隠居いたしました。」
秀吉は経言をジッと見て、
秀吉「こんな泥だらけですまぬの〜、今、城の庭に木を植えておったのじゃ。まぁ、2人ともゆるりとしてまいれ。三成、毛利からの大事な若武者じゃ。城を案内してやれ。」
三成「かしこまりました。」
秀吉「では、わしは木を植えてくるでの。」
経言は、
『これが毛利を窮地に追い込んだ男か…』と思った。
三成が大阪城の様々なところを案内してくれたが、まさに壮大豪華な城であった。
城を案内してくれた後、
三成「こちらの居間がおふたりの宿舎にございます。庭も自由に使ってよいとのこと…されど各々の役目を忘れずに…」
経言は三成の物言いに不快を感じていました。
三成さんは後に広家さんと因縁浅からぬ間なんだよ
その後、秀吉は元総を気に入ったようで、元総を連れ回していた。
経言は庭に出て武芸を磨く日々が続いた。
ある夜、経言は庭に出て夜空を眺めていた。
経言「父上も今宵の夜を見られてるかな…」
そこへ、
「元春は元気かの…」
経言が声の方を見ると、秀吉が立っていた。
経言は慌てて平伏した。
経言「これは秀吉様。」
秀吉「元春も夜空を眺めておるのか?」
経言「はい、毎晩見ておりまする。」
秀吉「元春…わしが恐れ慄いた武将は織田信長(おだのぶなが)様と元春だけじゃ。」
経言はそんな言葉が秀吉が出たことに驚いた。
秀吉「元春は隠居したが、今でも、わしと戦っておるの。」
経言「えっ…いや」
秀吉「よい。わしがそう感じるのじゃ。経言、元春にわしをよく見てこいと言われたであろう?」
経言「……」
秀吉はニコリと微笑み、
秀吉「そなたの目は元春に似ておる…毛利からの人質は元総で十分じゃ。そなたは安芸に戻ってよいぞ。」
経言「なんと…」
秀吉「安芸に戻ったら元春に申しておけ。わしは元春が怖いが、いつかはわしの前に平伏させてやる…とな。」
秀吉の言葉に嘘はないと経言は思った。
経言は大阪に1ヶ月ほどいたが、安芸に帰国したのだ…
つづく…
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