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吉川広家(経言)
元春は黙って聞いていた。
元長「人質交換なのじゃ。毛利(もうり)からは2人行くが、秀吉は我が吉川家の人間を所望なのじゃ。」
経言「…私が選ばれたことは光栄です。毛利を守るためのことですから。」
元長「父上(元春のこと)、よろしいですな?」
黙っていた元春が目を開き、
元春「吉川家の当主はそなただ…しかたあるまい。毛利を守るためだからな。」
元春さんは元長さんに家督を譲って隠居して日野山城(ひのやまじょう)の麓に隠居の館を建てている途中なんだよ
元長「では9月には大阪に行ってもらう。もう1人は小早川元総(こばやかわもとふさ)殿だ。」
元春「元総か…吉川と小早川からひとりずつ。」
小早川元総さんは小早川隆景(こばやかわたかかげ)さんの養子なんだけど、元総さんは元春さんや隆景さんの異母弟になるんだ。後の毛利秀包(もうりひでかね)さんだね。
毛利秀包(小早川元総)
その夜…
経言は眠れず庭に出た。そこには元春がいた。
経言「父上も眠れませぬか?」
元春「ん…わしは毎晩、こうして夜空を見ておるのだ。」
経言は夜空を見上げた。
元春「経言…大阪では秀吉をしっかりと見るのだ。」
経言「秀吉を?」
元春「天下を取れる武将をよく見てこい。こんな機会はないからな。」
経言「はい。」
元春は部屋へ戻っていった。経言は再び夜空を見上げた。
そこへ母である優(ゆう)がやってきた。
経言「これは母上…」
優「殿(元春のこと)と話てましたか…殿はそなたのことを側に置いておきたかったのですよ。」
経言「私を…」
優「しかし、毛利のためとの大義には背くわけにはいかないのです。よいですか、殿のためにもしっかり役目を果たして来なさい。」
経言と小早川元総は安芸国を出発した。秀吉側からは森重政(もりしげまさ)、高政(たかまさ)が毛利に人質として入って来た。
天正11年(1583年)10月、経言と元総は大阪城(おおさかじょう)に入った。
現在の大阪城
経言と元総は秀吉と謁見するため、居間で待っていた。
すると、周りが騒がしくなってきた。
ザワザワ
元総「なんだ、なんだ?」
障子の扉が開き、そこにいたのは足や手が泥だらけの男が現れた。
「待たせたの〜、わしが秀吉じゃ」
武将らしくない格好の泥だらけの男、経言が見た秀吉の第一印象だった…
つづく…
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