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天下を競望せず…
わしは吉川元春(きっかわもとはる)の三男、広家(ひろいえ)です。
今回はわし、経言(つねのぶ)に関する話です。
馬ノ山における元春軍と羽柴秀吉(はしばひでよし)軍の対峙に感じ入った経言は、
経言『父上は凄い。わしもあのようになりたい』
しかし、経言は自らの待遇に不満を持っていた。
この時、長男元長(もとなが)は嫡男で吉川家を継ぐ身、次男元棟(もとむね)は仁保氏(にほし)の養子となり、仁保氏の当主となっていた。
かたや、経言の任されている領地はわずかであったのだ。
秀吉軍が引き上げた後、元春軍は出雲の月山富田城(がっさんとだじょう)に入った。
経言は城の庭で太刀を振っていた。
そこへ声をかけてきた者がいた。
「太刀さばきが鋭いですな」
経言が声の方を振り返ると、そこには細身の武士がいたのだ。
経言「これは…小笠原(おがさわら)殿」
石見小笠原氏の当主、小笠原長旌(おがさわらながあき)である。
石見小笠原氏の家紋・三階菱
長旌「さずか猛将、元春殿の御子でございます。」
経言「いえ…わしは、まだ父上や兄上たちのように武功を上げておりませぬ。」
長旌「なんの、経言はまだお若い。これからでございます。わしも経言のような子がいたら…と思います。」
長旌は病弱で実子がいなかったのだ。
経言は寂しそうな長旌を見て、
経言「…小笠原殿、わしは吉川家の三男。今のままでは不安しかありませぬ。わしでよければ、お力になれませぬか?」
長旌「それは…わしの養子になって頂けると言うことですか?」
経言「はい。」
長旌「それはありがたいことですが…元春殿はご承知でしょうか?」
経言「…わしが父を説得します。」
経言は父である元春の承諾もなく、勝手に小笠原氏の養子になることを決めてしまったのだ。
日野山城(ひのやまじょう)に戻った経言は元春に小笠原氏の養子になることを打ち明けた。
元春は、
「馬鹿者!!」
当然ですが怒鳴られたのだ…。
つづく…
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