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天下を競望せず…
わしは吉川元春(きっかわもとはる)の三男、広家(ひろいえ)です。
毛利元就(もうりもとなり)は3人の息子、隆元(たかもと)、元春、徳寿丸(とくじゅまる)を呼んだ。
元就「皆にも承知してほしいのだが…此度、徳寿丸を竹原小早川家(たけはらこばやかわけ)の養子になることになった。」
元春「なんと!?竹原小早川と言えば、当主の興景(おきかげ)殿が亡くなり当主不在ですが…徳寿が当主に?」
竹原小早川興景さんは戦の最中に病死したんだよ
元就「うむ、当主としていくのだ。」
徳寿丸「私が竹原小早川家の当主に…。」
隆元「これは大内義隆(おおうちよしたか)様からもお願いされておる。竹原小早川家は水軍も毛利より強固だ。」
元春「ならば我が毛利に水軍を取り込むことができますな。」
元就「皆、聞くのだ。」
隆元、元春、徳寿丸は元就を見た。
元就「徳寿丸、竹原小早川家の人間にはなるが、3人は血を分けた兄弟であることは忘れてはならぬ。」
徳寿丸「はい。」
元就「この乱世、兄弟で争う家も多々ある。毛利はそうあってはならぬ…わしは毛利の当主になった時、心ならずも弟の相合元綱(あいおうもとつな)を討ち果たしてしまったのだ。」
元就「わしは今日まで、家を守る為に必死だった。わしは1人だったが…お前たちは1人ではないのだ。」
元就は矢を出した。
元就「元春、この矢を折ってみよ。」
元就は元春に一本の矢を渡した。元春はバキッと矢を折った。
元春「この矢が何か?」
元就「ならば三本の矢を束ねて折ってみよ。」
元春は三本の矢を受け取り、折ろうとしたが…
元春「う〜ん、う〜ん…くっ…折れませぬ!くそっ!」
元就「もうよい、矢も束ねると、折れず強固になる。お前たちも力を束ねれば強いのだ。3人、力を合わせて毛利の家を守っていくのだ。」
隆元、徳寿丸「はい!」
毛利元就の「三本の矢」のお話は有名だね。
バキッ!!
元春「はぁ、はぁ…父上、折れました。」
元春は足を使って折ってしまったのです。
隆元「元春!父上はそう言うことを伝えたんじゃないぞ!」
元就「はははははっ、全く元春は…相変わらずイノシシだの。」
元春「父上、わかっておりまする。この矢以上にわれら3人は力を合わせて毛利を強くします。」
徳寿丸「父上、毛利の男子としての心構えは忘れませぬ。」
元就と3人の息子が話しているのを美し(よし)は影で聞いていた。
美しはニコッと微笑んでいた。
美し「私はいい子供たちに恵まれました。」
その時、美しは急なめまいに見舞われた…。
つづく…
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