世は争乱…
我は室町幕府、第9代征夷大将軍・足利義尚(あしかがよしひさ)である。
「宗全(そうぜん)殿が自害を図ったと⁈」
文明4年(1472年)5月、細川勝元(ほそかわかつもと)にその報せが正室・里(さと)より舞い込んだ。
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聡明丸(そうめいまる、後の政元〔まさもと〕)も驚愕した。
勝元「宗全殿は亡くなったのか?」
里「いえ…自害しようとしたところを家臣に見つかり制止されました。ただ…今はその傷があり、床に伏せっております。」
聡明丸「なぜにお祖父様は自害をしようとしたのですか?」
里「…和睦がならず、責任を負い、乱を終結せんと思ったのでしょう。」
勝元「西軍の諸将は自害のこと知っておるのか?」
里「いえ、今は病で伏せっていると流布しております。」
この時、勝元の心中は乱の責任は自らもあると宗全と同じ思いだった。
聡明丸「父上、私はお祖父様を見舞いとうございます。行ってよろしいですか?」
勝元「なんと!?敵陣ぞ」
聡明丸「私は細川と山名の血を引く和睦の証。お祖父様とも話をしとうごさいます。」
勝元「…証か…わかった。なれど正面切って行くわけにはいかぬ。忍んでいくのだ。紗奈(さな)!紗奈はおるか!?」
紗奈「紗奈はこちらに。」
勝元「聡明丸が宗全殿の元へ行く。そなたが守ってやってくれ。」
紗奈「かしこまりました。」
こうして聡明丸は夜陰に紛れて山名邸に向かった。
予め、里が山名方に聡明丸が行くことを報せたのですんかり館には入れたようだ。
宗全は寝込んでいたが、聡明丸の面会を喜んだ。
宗全「敵陣であるのに、わざわざ来たか…小童」
聡明丸「私は山名の血も引いておりまする。敵ではなく和睦の証でございます。」
宗全「和睦か…乱を治めんと勝元と図ったが…わがままな奴らのためにならなんだ。」
そう話す宗全はやつれたと聡明丸は感じていた。
聡明丸「自害されたとて和睦にはなりませぬ。我が父、勝元は私を嫡男としました。そして細川の家督を私に譲るつもりです。」
宗全「勝元は退くのか…」
聡明丸「はい。」
宗全「わしも同じことをせねばなるまいな…そのことを言いにわしの元に来たのか?」
聡明丸「はい…いや、山名の血を引く者としてお祖父様に会っておきたかったのです。」
宗全「そうか…良い小童じゃ。」
宗全は笑い、聡明丸も微笑んだ。
その後、宗全は孫の山名政豊(やまなまさとよ)に家督を譲り隠居した。
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政豊と聡明丸は助け合う仲になるが…それは後のこと…
山名、細川と和睦に向かって動いているが諸将はそうではなかった。
西軍の畠山義就(はたけやまよしなり)は山城国で暴れ、東軍に寝返っていた朝倉孝景(あさくらたかかげ)は越前一国を支配した。
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未だ治らぬ乱の中、宗全が亡くなった…。
つづく…
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