諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
1237年春、泰時の館では若い武士が弓矢の鍛錬をしていました。
ザスッ!!
「おぉ、見事に的の真ん中を射抜きましたな。」
そう声をかけるのは泰時の前妻・優子(ゆうこ)でした。
優子さんは泰時さんと離婚しても泰時さんとは親しくしていたんだ。
そして、矢を射た若い武士は泰時、優子の孫・北条経時(ほうじょうつねとき)でした。
経時は1234年に11歳で元服し、将軍・藤原頼経(ふじわらのよりつね)から一字を頂き、経時と名乗りました。
そこへ泰時ともう1人若い武士が入ってきました。
「兄上!私も弓矢の鍛錬を致します。」
経時「戒寿(かいじゅ)、そなたには射るのは、まだ無理ではないか?」
「兄上、戒寿ではありませぬ。時頼(ときより)!元服して時頼にございます。」
経時「おぉ、そうであった。これはすまぬ。時頼、では射てみよ。」
元服したばかりの時頼は11歳、経時と同じく将軍・頼経の頼の一字を頂いたのです。
泰時は優子と共に2人を見ていました。
優子「時氏(ときうじ)が亡くなって7年…2人とも元服し、これからですね。」
経時さん、時頼さんのお父さんが時氏さん。時氏さんは泰時さんと優子さんの子なんだよね。
泰時「そうだな。わしの持っているものを2人に教え込まねばならぬ。」
優子「泰時殿…お互いに歳を取りましたな。」
泰時「なんの!まだまだ若いものには負けはせぬわ!」
優子「ふふっ、無理はせぬように」
泰時は54歳になっていました。
泰時が2人の孫に執権として、武士としての教育を進め…1239年にある報せが入りました。
その報せは忍びの風(ふう)が持ってきました。
泰時「誠か!?」
風「はい、殿の仰せで隠岐で見張っていましたから。」
泰時「…そうか、法皇様がお隠れになったか…」
隠岐…法皇…そう…後鳥羽法皇(ごとばほうおう)が崩御されたのです。
崩御って…天皇さん、法皇さんが亡くなることだよね。
風「法皇様が残された置文の内容がこちらです。」
朕が万一、この世の妄念にひかれ魔物になったなら、この世に災いをなす。朕の子孫が世を取ったなら、それは朕の力によるものだ。朕の子孫が世を取ったなら朕の菩提を弔うのだ
泰時「法皇様らしい…法皇様が魔物になり災いを起こすなら…わしを襲えばいい。わしが全てを受けてみせる!」
泰時は承久の乱(じょうきゅうのらん)で法皇様を隠岐に配流して以来、災いを受ける覚悟を決めていたのでした…。
つづく…
次回をお楽しみに〜
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