諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
「この訴えは弟の武定(たけさだ)の勝訴である!」
武定「ははっ」
武定は平伏し、兄・武智(たけとも)は拳を床に落とし項垂れました。
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これは幕府に持ち込まれた所領争いの訴えの裁判でした。
武智は九州に所領を持つ武士の長男でした。
武智と武定の父は所領を売り払うほど、生活に困窮していました。
武智は苦労し、その所領を買い戻し父に返したのです。
武智は結果、借金を抱えたんだね
ところが父は亡くなる前に所領を弟の武定に与えてしまったのです。
納得のいかない武智と武定は争い、争論は幕府に持ち込まれたのです。
泰時は評定を開き、
泰時「所領の相続手続きは正式にされておる。」
三浦義村(みうらよしむら)「ならば問題あるまい。武定の勝ちだ。」
泰時「…うむ。」
北条時房(ほうじょうときふさ)「泰時殿の心情は父のために借金までして所領を買い戻した武智に勝たしたいのだな…」
泰時「確かに武智の親孝行を見れば、そうしたいが…御成敗式目(ごせいばいしきもく)に照らし合わせたら…武智の負けとなる。」
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評定の結果を泰時は武智、武定に伝えました。
泰時は武智を不憫に思い、その後、目をかけ衣食を助けたのです。
武智は妻とともに質素倹約しまたしたが、暮らしは貧しかったのです。
ある日、泰時の元に九州に領主の欠けた土地が見つかったと報せがありました。
泰時は武智を呼び出し、
泰時「武智、そなたに所領を与える。場所は九州だ。」
武智「泰時様…ありがとうございます。ここ2、3年、妻にわびしい思いをさせてしまいました。頂いた領地に赴き、十分いたわってやりたいと思います。」
武智は涙ながらに語り、泰時はそれを聞き、
泰時「苦労した時の妻を忘れない…そなたの思いは立派だ。この泰時、そなたを忘れぬぞ。」
泰時は九州に旅立つ武智に馬と鞍を与えたのでした。
泰時は御成敗式目に基づき、公平な裁きをしながらも、真っ直ぐな思いを持つものは助けていたのでした。
ちなみに武智、武定って名はこの物語の創作だからね。
1234年、京で後堀河天皇(ごほりかわてんのう)様が崩御したのです…。
つづく…
次回をお楽しみに〜
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