諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
1216年秋…
「私は宋(そう)の国へ行くぞ!」
鎌倉幕府3代目将軍・源実朝(みなもとのさねとも)様の突然の言葉でした。
これより5ヶ月ほど前のこと…
鎌倉に宋の僧侶、陳和卿(ちんわけい)がやってきました。
陳和卿はかつて平家(へいけ)によって焼失した東大寺(とうだいじ)の再建に尽力した僧侶です。
陳和卿は東大寺が再建し落成式に参列した源頼朝(みなもとのよりとも)様が面会を求めたのに対し、
「頼朝は戦で多くの人の命を奪った罪深い人、そんな人と会いたくない」
と言い切ったのです。
これを聞いた頼朝様は感心したそうです。
そんな陳が実朝様に会いにきたのです。
実朝様が和歌に通じ温和な性格だということを聞いたのでしょうか…
陳は実朝様と会うと、
実朝様を拝み、涙ぐんだのです。
陳「貴方は昔、宋の医王山の長老でした。私はその門弟だったのです。」
実朝「なんと!…不思議なことがあるものよ。」
その場には泰時がいました。
泰時「鎌倉殿(実朝様のこと)いかがされました?」
実朝「…以前、私の夢に高僧が出てきて同じことを告げたのだ。私の前世は宋の長老…。」
泰時「その夢は誰に話されましたか?」
実朝「いや今、話したのが初めてだ。ずっと胸の内にしまっておいた。だから不思議なのだ。」
その日より実朝は陳を信じ、しばしば御所に呼んでは宋の話を聞いたりしていたのです。
この頃、実朝様の官位はどんどん上がっていました。
6月には権中納言、7月には左近衛中将を兼ねました。
実朝様の昇進が早いのは和歌好きな実朝様を京の後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)様が気に入っていたからのようでした。
この昇進の早さに異常を感じたのが北条義時(ほうじょうよしとき)と大江広元(おおえのひろもと)でした。
義時「鎌倉殿はまだ24歳、この昇進は異常だ。京の思惑があるのでは…」
広元「鎌倉殿も昇進には喜んでおられる。」
義時「かつて頼朝様は朝廷がくれた官位をすぐ返上したもんだが…鎌倉殿は何を考えておられるのか?」
広元「わしが問うてみよう。」
数日後、広元は実朝様に問いただしてみました。
すると…
実朝様の答えに広元は何も言えなかったのです…。
つづく…

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