事実、暖かい寒さという感覚が存在するのであり、
暖かさのうちのある感覚は寒さによってのみ感じられるのだ
問題になるのは温度の高さではなく質だ
例えばこたつの暖かさ、暖炉の暖かさ、
暖かい部屋のくもった窓の外に見える柔らかな雪景色の醸し出す暖かさ、
これらの暖かさは
身体が一方に感じている寒さなくして感じることができない

もし寒さが「暖かさの欠如」として定義されるなら、
その欠如自体には絶対的な価値がある
こたつの暖かさは寒さを必要としているからだ
大げさにいうなら、こたつを暖かくしているのは、
実は電熱線ではなく、寒さの方なのだ
人間という存在もまた同じではなかろうか
人は一人では生きられない
しかしその弱さこそが人を強くし、
人を人としているのだ
寂しさを感じない人間ほど、
寂しい人間はいない
私は神という存在が嫌いだ
それは神が完全であるからであり、
その完全さこそが人を醜く見せるからだ
神の完全さは
実は他ならぬ人の不完全さから生み出されているのだということを
神自身は知らない
神には欠如が欠如しているからだ