キースのソロ・ピアノコンサート(@渋谷Bunkamura)に行ってきた。
雨にもかかわらず、オーチャードホールは満員だ。
外国の方も多い。
キースのコンサートは初めてだったので、
どんな服装で行ったらいいのかよく分からず、
黒のジャケットにジーンズという中途半端な格好で行ったが、
実際にはみんなそれほど服装は気にしていないようで、いろんな人がいた。
開演予定を10分くらい過ぎて、キースがステージに現れた。
黒のドレスシャツに、黒のボトムス。
腕を前に垂らしながらも、深くお辞儀をして、彼はピアノの前に座った。
Part I
第1曲
彼は立ち上がり、ピアノの弦を直接指で弾き、
変拍子の、プロコフィエフやバルトークを思わせるリズムを刻む。
この始まりには意表を突かれた。
このリズムを保ったまま、内部演奏と鍵盤演奏を交互に繰り返す。
内部奏法は実演で初めて見たのだが、かなりぎごちない動きではある。
第2曲
東洋風の音階による、印象派的な曲。
キースにしては珍しい雰囲気を持つ曲である。
第3曲
クラシックで言うと、後期ロマン派的な曲である。
第4曲
ここに来て、ようやくジャズらしくなってくる。
キースお得意のスケールである。
第5曲
第1曲の雰囲気が戻ってくるが、リズムはよりブルースに近い。
バスドラムのように足でリズムを刻みながら、
中腰の姿勢でピアノを鳴らしきる。
第6曲
ヴェーベルン的な序奏に始まり、独特のトリル連打が続く。
第7曲
前曲から一転、『Melody at night with you』を思わせる温かいバラード。
弾き終えたキースは、水を口に含むと、Part I の終わりを告げた。
Part II
第1曲
痙攣のようなトリルが続く、ペンタトニックを基調とする曲。
第2曲
ベルク風の、暗い情熱を秘めた曲。
第3曲
無窮動の序奏に続き、再びブルースのリズムが戻ってくる。
中腰の姿勢で、まるでサキソフォーンを吹くように、
スイングしながら、彼は楽しそうにピアノを弾く。
第4曲
埃を払うかのように、幾度か鍵盤を弾いた後、彼は演奏を止め、考える。
もう一度、もう少し長いフレーズを弾いた後で、
彼は"Bye Bye"と言い、この曲想に別れを告げ、暫く黙考する。
逃れていく曲想たちを捕まえんとするかのような時間の後、
彼は夢の世界へ入り込み、今日一番の美しいメロディーと一つになる。
第5曲
虹を描くかのような、美しい曲が続く。
第6曲
照れ隠しのように、再びスイングを始める。
第7曲
スタンダードナンバーのような、ゆるやかなブルースでPart II は終わる。
この時点で閉演予定時刻は近づいていたのだが、
熱烈な歓声に答えて、
彼はI'm Through With LoveやOver the Rainbowなど、
4曲もアンコールを聴かせてくれた。
演奏が終わったのは21:20である。
初期のように、徐々に変化を加えながら、
長時間連続して1つの部分を演奏するのではなく、
多彩な楽章を積み重ね、コンサートを構築していくのが、
近年のキースの方法のようである。
全体的な感想としては、非常に聴きやすい演奏であった。
個人的には、パリやスカラの冷厳な雰囲気が好きで、
Radianceで聴かせてくれたような新鮮な演奏を期待していたせいか、
若干物足りない感があったのは否めない。
恐らくこの日が新たな伝説となることはないだろう。
それでも、繊細でいてふくよかなあの美しい音色は健在だ。
速いパッセージでも、ゆっくりのリズムでも、ピアニシモでも、
しっかりと鍵盤を押さえて弾ききる技術は驚異である。