今から15年ほど前、
ディープインパクトという日本競馬界最強馬と言っても過言ではない、とんでもなく強い1頭のお馬さんが大活躍していました。
主戦である武豊騎手が、
「飛んでいるような」と形容したその走りは正に異次元。
ほかのお馬さんたちの繰り広げる2着争いを横目で見ながら、ディープはただ1頭、ただ走っているだけ。それで大きな差をつけて圧勝しちゃう。
何度かレースを見に競馬場まで足を運びましたけど、私を含めほかのお客さんも皆、ディープだけを見てる感じでした。
その走り自体が感動を与えてくれたのはもちろん、彼が走っている時の観客席の様子が今でも印象に残っているんですよねえ。
誰もが皆、今まで見たことのないような素晴らしい光景を目の当たりにしている、そんな目で皆がレースを見守っていたあの雰囲気は、後にも先にも彼のレースでしか感じたことはありません。
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競走馬がレースで結果を残すための手助けをする職業と聞いて真っ先に思い浮かべる職業は、やっぱり「騎手」ですよね。
でも、騎手以外にもお馬さんたちの体調を管理し、能力を発揮させる重大な職業に「調教師」というものがあります。
馬主さんからお馬さんを預かって管理し、調整してレースに出走させるのはこの調教師さんのお仕事です。
私は、この競走馬の調教師と、塾の講師はすごく共通点のある職業だなっていつも思っています。
誰かから大切なお子さん(調教師さんにとってはお馬さん)を預かり、その才能を磨いて結果を出す手助けをする。
競走馬の現役生活はだいたい2~5年程度ですが、一緒に過ごす期間の長さも似ていますね。
調教師さんが馬主さんから預かるお馬さんの頭数も10~40頭くらい。ここも、個人経営の塾で指導させていただく生徒さんのキャパとおなじくらいです。
個々の特徴・性格を把握し才能を伸ばしつつも、全体としてのバランスも保たねばいけません。う~ん、何から何まで通ずるものばかり。
そんな目線でディープインパクトのことをいろいろ考えていたある時、ふと思ったんです。
「ここまでの才能に出会った調教師さんの目には、ほかにお預かりしている馬たちのことはどんな風に見えていたんだろう?」
果たしてディープに注ぎ込むのと同等の情熱を持って接することが、本当にできていたのだろうか。
「ほかの馬たちは、その調教師さんをどういう思いで見ていたのだろう?
ディープインパクトばっかり可愛がって、ボクたちのことなんて構っても気にしてもくれない、なんて思ってやしなかっただろうか。
そんなことを考えてしまうのは、自分がこの仕事をしていて…
「ディープインパクト級の生徒さん」に出会ってしまったとき、本当に平等に、その生徒さんを含めた生徒さん全員に接することができるのか、或いはできていたのか。
という思いがあるからなのだと思います。
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そんな風に、私自身の生徒全体を見て、バランスを保ち、生徒さん全員に平等に接するという感覚をも少々狂わせてしまうような、
「ディープインパクト級の生徒さん」ですが、
今まで出会った100人以上の生徒さんの中で、そう言えるのは2人だけかなあ。
塾講師を始めて1年目の年に担当した生徒さんと、
今年の春、高校受験を終えた生徒さん。
奇しくもこのふたり、同じ高校に合格し、しかも後者の子の志望大学も前者の子が合格した大学と一緒、将来の目標も医療関係っていう、共通点だらけの2人なんですけどね^^;
ふたりの大きな共通点は、もうひとつ。
どちらの生徒さんも、最初から「できる子」だったわけではないということ。
相性の問題も当然あるとは思いますが、
話を聞く姿勢だったり、
こつこつやる重要性に気付いたり、
少しずつ結果が出ることで勉強の楽しさを味わえたり、私との信頼関係が築けていったり。
そんなことの積み重ねが、いつの間にか彼女たちを塾のディープインパクト的存在へと変えていったんです。
だから今この瞬間、優秀である必要などありません。
これから先、塾生さん全員が塾にとって、私にとっての
「ディープインパクト」
になる可能性があるってことです。
未来は必ず皆に平等に訪れますが、
その未来がみんなにとって平等に素晴らしいものとは限らないということ。
未来を切り開くために自身がどれだけのことをやったかによって、決して平等には見えない未来が個々に訪れる。
それもまたある意味平等なのです。



