内田けんじ『アフタースクール』 | What's Entertainment ?

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映画や音楽といったサブカルチャーについてのマニアックな文章を書いて行きます。

長編デビュー作『運命じゃない人』('04)で'05年カンヌ国際映画祭4冠受賞という快挙を成し遂げた内田けんじ監督・脚本の2008年公開、長編第二作目『アフタースクール』を鑑賞。その感想を書きたい。 撮影は柴崎幸三。音楽は羽岡佳。

35mmの夢、12inchの楽園

35mmの夢、12inchの楽園


とにかく、公式HPにジグゾー・パズルのピースがデザインされていることからも分かるように、物語の終盤まで展開の予想がまるでつかない作品である。それが、最後に全てのピースがピタリとはまる。その爽快感に酔って欲しい。
そして同時に、この作品のもう一つのテーマである、切なさと愛しさとひたむきさが立ち上がる。そう、まるで青春の残り香のように…。

35mmの夢、12inchの楽園



如何せん、どのシーンも伏線と仕掛けだらけなので、あくまで簡単にストーリーを説明する。

神野(大泉洋)と木村(堺雅人)と美紀(常盤貴子)は高校時代の同級生。現在では、神野は母校の教師に、木村は大手商社の梶山商事に勤務するサラリーマンに、美紀は臨月を迎えた妊婦に…とそれそれの人生を歩んでいる。
美紀がまさに出産するというその時に、肝心の木村が行方不明になる。謎の女(田畑智子)と密会している木村を、偶然会社の同僚が目撃。その様子を撮った写メが会社の上層部の知るところとなり、社長の指示で怪しげな探偵・北沢(佐々木蔵之介)に木村の行方調査が依頼される。
木村の同窓生・島崎を装い、木村の母校を訪ねる北沢。そこで神野と会い、何故か神野が北沢に代わって木村の行方を捜すことになるが…。

35mmの夢、12inchの楽園

35mmの夢、12inchの楽園

35mmの夢、12inchの楽園


そにかく、どの場面にも伏線と仕掛けが張り巡らされている。全シーン、気を抜かずに集中して観て欲しい。
実に、プロットが良く練られている。これだけのエンターテイメントを作り上げた内田監督の才能には舌を巻く。
譬えて言うなら、バラバラのルービック・キューブを内田監督の指示に従って動かしているうちに、気が付いたら6面が完成していた、そんな感じである。

35mmの夢、12inchの楽園

ただ、この手のトリック・アート的作品にありがちなトゥー・クレヴァーさというか情報の盛り込み過ぎが、若干惜しまれる。
もう少しストーリーをスリムにすると、最後のピースがはまった時の爽快感が更に増すと思うのだが。

エンド・ロールが終わっても監督名のクレジット前にひと遊びあるので、最後まで席を立たないことをお薦めする。ただ、この「遊び」の部分も含めてネタを詰め込み過ぎなのだが。

35mmの夢、12inchの楽園


いずれにしても、実に良くできた作品には間違いない。
是非、内田監督の仕掛けたトリックに嵌められて欲しい。

映画にエンターテイメントを求める向きには、必見の作品である。