第十二話「俄なる『明月余情』」、今回も面白かった。

吉原で祭りを、と話が始まります。大文字屋と若木屋の対決となりましたが、どうなっていくことか。また、今回蔦重はどんな商いをするのか。

このブログは、ドラマからマーケティングのヒントを探しご案内しています。以下、一部ネタバレを含みます。

 

祭りで人が集まる

「祭り」といえば神社の例大祭もあれば、現代で言う「イベント」もあります。物語に出てくる「俄(にわか)」とは、簡単にいえばアマチュア芸のようなもので、庶民の楽しみの場であったようです。
この賑やかさを作れば、吉原に人は集まる。そこで西村屋は若木屋の案のもと錦絵「青楼俄狂言」を売り出そうとします。
一方蔦重は番付に手をつけているものの、俄は始まってしまいます。しかし、ちゃんと考えていましたね。
西村屋の錦絵は俄の客引きになっている。自分が取り組むのは、祭りに来た客に耕書堂を覚えてもらえるものを作ると。
 

人が集まるところに商機あり

祭りでは、大文字屋と若木屋の対決に沸いていました。そんな賑やかな吉原の中に、蔦重と北尾重政と勝川春章の姿が。
蔦重は二人にアイデアを話し、そこに朋誠堂喜三二の姿も。出来上がったのは祭りの様子をまとめた本「明月余情」、祭りに来た人々が土産にと買っていき飛ぶように売れていました。西村屋、悔しがっていましたね。
蔦重の目論見通り、耕書堂の名は売れていったと思いますが、このブログでのポイントはここにあります。
人が集まるところには、ビジネスチャンスがあると言うことです。昔から大きなお寺や神社の参道には店が並び、そこで商いをしています。お参りに来る人々を目当ての商いです。現代では、観光地となっているお寺や神社へは団体客を乗せた大型バスが専用駐車場に入れるので、なかなか商売は難しくなりましたが、元々は参道に商いをするお店が並んでいました。
イベントにキッチンカーを出す、と言うのも人が集まるところでの商い、ということですよね。
賑やかな祭りの中に、大文字屋と若木屋の踊りの笠を持っている人たちがたくさんいましたが、これも祭で販売していたのでしょうか。
蔦重の本も笠も、祭りの体験価値を高めるアイテム、祭りに来た人をターゲットにした「売れる商品」を見事につくっています。

クリエイティブパートナー

もう一つ注目したいのが、朋誠堂喜三二。尾美としのりさんが演じていて、ようやく本格的な出番となりました。
朋誠堂喜三二は戯号、いまで言うペンネームやビジネスネームです。本名は平沢常富、秋田藩の留守居役です。蔦重は一緒に青本を作る話を進めていましたが叶わず、しかし「明月余情」をきっかけに、今後一緒に本を作ってくようです。
現代でいえば、プロデューサーが新たなクリエーターと組むこと。蔦重は、先の北尾重政や勝川春章といったクリエーターにも仕事を依頼しています。様々なクリータートの関係づくりは、プロデューサーにとって大変重要です。
蔦重は今後、喜多川歌麿や葛飾北斎、東洲斎写楽といったクリエーターと出会っていくことになりますが、ドラマの中での展開も楽しみですね。
 
次回、再び鱗形屋に何か起こるようです。どんな展開になるのでしょうか。

 

過去の記事もご覧ください。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十一話「富本、仁義の馬面」、いつも期待を裏切りません、面白かった。

『青楼美人』に青ざめた西村屋に、「これは売れませんよ」と言った鶴屋。それは一体・・・。

このブログは、ドラマからマーケティングのヒントを探しご案内しています。以下、一部ネタバレを含みます。

 

売れるはずが・・・

売れると思ったのに・・・売れない、ということは往々にしてあります。なぜ、売れないのでしょうか。

耕書堂の『青楼美人』には、瀬川の最後の絵姿があり、吉原の女郎たちの普段見られない日常が描かれています。上様にも献上し、上様も見たかもしれない。

商品のデザインもいいと思うし、販促も色々やった、新聞にも取り上げてもらった、でも売れない、ということはあります。がんばったのに、なぜ売れないのでしょうか?

誰のための商品?

耕書堂の『青楼美人』は、なぜ売れないのでしょうか? 市中の本屋が取り扱わなくなったから? それも一因かもしれませんが、須原屋でも販売しています。西村も「これは新しい」と言って焦っていましたね。
ところが、耕書堂で本を手に取った客は結局買いませんでした。唯一、「これめっちゃおもしろい」と蔦重に語る客がいましたね。つまり、一部の人にはストライクだったという商品だったということです。商圏がこの時代よりも広くネット販売もでき、ニーズが細分化された令和の時代ならヒットしたかもしれません。
さて、蔦重が作った『青楼美人』、一体誰のための本だったのでしょうか?
この本は『雛形若菜』に勝る吉原絵本(錦絵)を瀬川の道中に合わせて売ると投げかけられたのがきっかけ、蔦重も最初は乗り気ではありませんでした。つまり、『青楼美人』は自己都合のために作った本だと捉えることができます。
誰のために作った商品か、ここ、とても重要です。

つまり、売れる商品とは

「いいものを作れば売れる!」と意気込んで作った商品が売れない、という話を聞いたことがあるのは一つや二つではありません。
「いいものを作れば売れる」という顧客不在で作った商品は売れるのでしょうか?
一方売れた吉原再見は、吉原で楽しみたい人のために作った商品。これはマーケットインの考え方です。
つまり、「ニーズ」に応えた商品です。
鶴屋の旦那、「これは売れません」と言いました。更に、「私たちはハッとしますが、世の中の人はどうでしょう?」と。
「世の中の人はどうでしょう?」この言葉に尽きます。
 
さて、余談ですが、尾美としのりさん、いつもクレジットに出てくるけど見つからなかったけど、先週ようやく見つかりました。今回も『青楼美人』をベタ褒めしていましたね。
私の大好きな俳優さんの一人ですが、ちょい役なわけがない、これからの登場が楽しみです。
 
2025.3.24 追記
なぜ売れないのか、蔦重が作った『青楼美人』ドラマでは一部の人には刺さっていましたが、思うように売れませんでした。
鶴屋の旦那がいう「世の中の人はどうでしょう?」とは、「市場(顧客)に向けて作った本なのか」という意味だと思います。単に自己満足の商品になっていないか、そんな意味に感じました。
「売れる」とは、お客様が「買う」ことによって成り立ちます。お客様が「買う」商品を作ると言うのがマーケティングの考え方です。
ただ、ドラマでも一部の人には刺さっていたと言うことは、これはこれでニッチではありますがターゲットにマッチした商品ではありました。ただ、市場規模が小さかった。
売れる商品をねらうには、顧客に向き合うことが重要です。今後、そんなシーンも描かれるのではないでしょうか。
 
過去の記事もご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十話「『青楼美人』の見る夢は」、今回も面白かったですね。

吉原の旦那衆から『雛形若菜』に勝る吉原絵本(錦絵)を瀬川の道中に合わせて売ると投げかけられ、自分たち都合の儲け話にしっくりこない蔦重、落籍する瀬川に何かしてやりたいと考えていました。

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トレンド調査

須原屋の旦那と平賀源内を待つ蔦重、街中を散策していました。暇つぶしのように見えますが(実際そうだったかもしれませんが)、しっかりトレンド調査していました。

人気の絵師、勝川新章に着眼。また、役者絵の役者姿に疑問を持ち、役者していない時の役者を描いてもいいのでは?と疑問を持ちます。ここ、大事なところだと思います。

推しの人の、いつも見る姿はいろんなところで見られるわけで、普段見られない姿を見られるというのは魅力的だと思いませんか? 映画も、見終わった後はメイキング映像も楽しいものです。

権威付け(アソシエーション)

須原屋の旦那と平賀源内とランチをしながら悩みを聞いてもらっていた蔦重、紆余曲折あって平賀源内の一言から、吉原の錦絵を上様に献上する、というアイデアを思いつきます。

吉原の旦那衆にその話を持ちかけ、噂だけでもいい、上様に届いているという話から客筋もよくなるのでないかと合意を得、資金を調達します。

当店の〇〇は、△△ホテルでも使われています。これまで累計10,000人の方にご愛用いただいています。といったコピーを目にすることがあります。マーケティングにおいて、これらの表現は 「権威付け(アソシエーション)」 または 「社会的証明(ソーシャルプルーフ)」 と呼ばれます。いずれも、消費者の信頼感を高め、購買意欲を刺激するために使われます。

ただし、行きすぎる表現は景品表示法に触れる可能性があります。ドラマのように、噂だけでもいい、というのはNGですからリーガルチェックをお忘れなく。
かくして出来上がった『青楼美人』は、田沼意次を通して上様に献上されます。

イベント・プロモーション

瀬川の最後の道中の日、最も人が集まり注目度も高まるこのタイミングで『青楼美人』を紹介します。そして、上様に献上し、見たかもしれないとアピール!

また、『青楼美人』には、瀬川の最後の絵姿があり、吉原の女郎たちの普段見られない、日常が描かれています。売れる要素を含んだ吉原絵本を、最も注目されるタイミングで売る。イベント・プロモーションの大事なポイントですね。須原屋でも飛ぶように売れていましたね。瀬川も自分の絵姿に驚き、楽しい思い出ばかりが思い出せそうだと喜んでいました。

新商品、新発売といった導入機の商品は、まず認知活動が重要です。その活動にはイベントがオススメ。試食とか、体験といったイベントも、イベント・プロモーションの一環です。

 

さて、『青楼美人』に青ざめた西村屋に、「これは売れませんよ」と言った鶴屋。それは一体・・・。次回が楽しみですね。

 

 

 

 

第九話「玉菊燈籠恋の地獄」、今回も目が離せませんでした。

市中の地本問屋を追い返し、自分たちでやればいいじゃねえかと盛り上がっていましたが、鶴屋の「今後一切、吉原には関わらない」という言葉で、再見を作っても市中では売り広めてもらえない、と蔦屋重三郎は落胆。販路が無くなり何か工夫をしなければなりません。

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販路を絶たれ・・・

忘八の親父さんたちは、再見は吉原内で売ればいいといいますが、重三にとっては一大事。その上、「それをなんとかするのがお前の仕事だろう!」と言われ、そう言うもんじゃないだろうと、私にも他人事ならぬ経験が・・・

さて、どうしたらいいかとぼやいていたところ、次郎兵衛兄さんが「玉菊燈籠などの催しもので〜」と言ってましたね。

その後のシーンで、重三が何やら紙に書き出して並べていました。次郎兵衛兄さんの言葉がヒントになったようです。

吉原の年中行事

次郎兵衛兄さんが言っていた玉菊燈籠とは、吉原で行われる三大行事のひとつでお盆に灯籠をつけた行事だそうです。それ以外にも年中いろんな行事が行われていたようで、重三が書き出していた内容も、毎月5〜6は何かありましたね。

つまり、このタイミングでは吉原は賑やかになる、人出が増えると言うこと。このチャンスを活かさない手はありません。

販促カレンダー

現代に置き換えれば、毎月の集客チャンスを書き出して計画的に進めるための「販促カレンダー」を重三は作ろうとしていたのではないか、と妄想します。その時、そこまで思わなかったとしても、結果的には吉原の年中行事を書き出して集客企画を立てることができるでしょう。
各月の集客チャンスになるものといえば、行事はもちろん、習慣やその時期の旬なものなどです。例えば、
1月 正月、初詣、初売、お年賀、成人の日、受験勉強、冬物セール
2月 節分、初午、バレンタインデー、花粉症、梅
3月 卒業式、ひな祭り、ホワイトデー、春の彼岸、桜
4月 お花見、入学式、新学期、GW、紫外線
5月 GW、こどもの日、母の日、新緑、行楽、遠足
6月 入梅、父の日、お中元、ボーナス、雨具、運動会
7月 梅雨明け、七夕、夏休み、夏物セール、土用の丑、海の日
8月 山の日、お盆、花火大会、帰省、夏バテ、熱中症
9月 防災の日、運動会、敬老の日、秋の彼岸
10月 スポーツの日、紅葉、秋の行楽、新米、暖房準備、読書週間、ハロウィン
11月 文化の日、お歳暮、七五三、いい夫婦の日、ブラックフライデー
12月 歳末売出し、降雪対策、クリスマス、大晦日、帰省、年越し蕎麦
ざっと毎月を書き出しても、色々あります。ここに、皆さんのご商売に関係するものを加えていけば、販促カレンダーの出来上がり。これらは全て集客や販売のチャンスに繋げることができます。
重三もこのように吉原の年中行事を再見に取り入れたり、それらのタイミングで企画ができるはずです。今後どのような商いをしていくのでしょうか。
 
さて、今回は切ないお話でしたね。次回、どんな展開になるのか。
 
 

 

第八話「逆襲の『金々先生』」、今回もおもろかったですね。
蔦屋重三郎が作った「吉原細見 籬の花」は2倍以上売れ、吉原は賑やかになりました。今回もマーケティングのヒントが見つかりました。
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新商品の売り方

蔦重の耕書道から発売された「吉原細見 籬の花」、西村屋から発売された「新吉原再見」、これまで再見は鱗形屋が販売してきたので、どちらも新たに販売する立場です。その新規参入で新商品を販売するにあたって必要なのが、認知活動です。

西村屋は店頭で三味線を引き、売り子さんをつけて人を寄せていましたね。そこに現れた蔦重、西村屋の新吉原再見で吉原細見 籬の花が二冊買えると現代では見られない比較アピール。

どちらも、新商品の発売に欠かせないイベントプロモーションです。

 

新商品は認知度も無いわけですから、知ってもらうことが最優先。その商品が飲料なら試飲やサンプルの配布などがありますね。それに注目してもらうために特設ブースを用意したり、といったことの江戸版がドラマで描かれていたと考えればおわかりではないでしょうか。

 

また、鱗形屋が用意した「金々先生 栄花夢」、鶴屋は一気に販売せず、人気が出たところで一気に売り出す案を提示していました。これは売れる!と思ったからこそ、そういったアイデアとなったのでしょうか。

しかしこの「金々先生 栄花夢」、蔦重と鱗形屋の旦那と話していた企画から生まれたようですよ。売れる商品企画が出来ていたということですね。

 

集客には成功したが・・・

蔦重の「吉原細見 籬の花」で吉原にたくさんの人が訪れるようになった、つまり集客に成功したのですが、見世(女郎屋)では問題が発生していました。女郎の負担が大きくなっていたのです。なんだか、最近のオーバーツーリズムのような話だなと思いました。

こういったことは、想定外なことが多く予測がつけ難いのですが、こういった経験から課題解決に取り組むことが重要ですね。

 

「引札」とは

鱗形屋と鶴屋の二人の会話の中で出てきた「引札屋」という言葉。「引札(ひきふだ)」とは、現代でいう「チラシ」のことです。鶴屋は耕書道を下げすました表現をしたつもりだと思いますが、チラシはローカルビジネスにおいて重要な集客アイテムです。

お客を引く、引き寄せる、引きつける、といった意味からが語源だそうすが、正に集客のためのツールです。(語源には諸説あります)

 

 

吉原の旦那衆も、吉原で本屋が持てることに喜んでいました。市中の本屋に頼らず、自分たちで情報発信ができるようになりましたから。
 

さて、次回も楽しみですね。