今回は、少々マニアックな記事を掲載したいと思います。
「合同会社の(代表)社員が死亡した場合の出資金(持分)の取扱について」
合同会社の社員が死亡した場合、その死亡した社員の出資金(持分といいます)について、株式会社とは異なり、特殊な取り扱いが行われております。
株式会社の場合には、亡くなった方が株主であれば、当然に株は相続人に引き継がれますし、亡くなった方が取締役等の役員であった場合は一身専属的な地位であるため、相続人には引き継がれません。
一方、合同会社の場合は同一人が出資者(株主に相当)であり、社員(取締役に相当)であるため、相続人に引き継がれるのかどうか、
引き継がれるのとしたら何が引き継がれるのかが問題となります。
その取扱いとしては、その会社の定款で、次のような定めがあるかどうかによって異なってきます。
<定款の定め>
社員が死亡した場合または合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する。
(“相続による持分承継の定め”と呼ばれます)
つまりは、亡くなった社員の持分を相続人が引き継ぎますよ、という定めがあれば、死亡社員と相続人がそっくり入れ替わることになって、
そのような定めがなければ、相続人に対して金銭等が払出されることになるということです。
持分が払出されるかどうかは、会社から資金が流出するかどうかにかかわるため、会社の債権者に多大な影響を与える可能性があります。
よって、債権者を保護する手続きが必要となるかどうかで大きく異なって参ります。
それでは、上記の定款の定めの有無に分けて説明していきます。
また、それぞれの場合で論点がいくつかありますので合わせて記載します。
①定款の定めがある場合
死亡した社員の相続人へ、亡くなった社員の持分が引き継がれます。
持分が引き継がれますと、相続人は全員がその会社の社員に就任することになります。ここでは、“全員”が社員となるということがポイントです。
論点Ⅰ:複数の相続人のなかで、一部の人が社員になりたくないといったらどうなるのか?
相続人の一部の方が、これまで全く経営に関与してこなかった為等の理由で、社員になる事を拒否する事は十分に考えられます。
では、遺産分割協議によって、相続人のうちの特定の方(例えば長男だけ)が社員になる事は出来るのでしょうか。
答えはNOです。理由としては、亡くなった方の生前の権利だけではなく義務までもひっくるめて相続するからであると言われています。
(簡単に言うと、義務とは借金などの責任の事で、これは相続人で好きな様に責任の分担を決める事は出来ません。)
従って、現実的な対応としては、一度相続人全員が社員に就任し、拒否している方は即座に退社し、他の社員に持分を譲渡するという方法が必要となります。(ちなみに、相続放棄をしている相続人がいた場合には、その者は社員にはなりません。)
論点Ⅱ:亡くなった社員が代表社員であった場合、相続人は必ず代表社員となるのか?
死亡した社員の地位を、そのまま引き継ぐわけでは無く、もし相続人が代表社員になるのであれば、改めて選任を行う必要があります。
これは、死亡した社員の地位の一切(代表者であることを含め)を承継するわけではなく、あくまで出資金(持分)を引き継ぐことになるため、
相続人は出資者(つまりは「社員」)でしかないためです。よって、相続人が代表社員になるためには、新たに選任される必要があります。
なお、相続人による持分承継の定款の定めがある場合には、持分の払い出しはされません。
よって、登記の面で言えば、社員の変更登記のみが必要となり、資本金の額の減少登記は不要となります。
②定款の定めが無い場合
相続人の持分承継の定めが無い会社の場合は、死亡した社員の持分は、相続人に対して会社が金銭にて払戻しを行うことになります。
相続人は、会社に対して全員で払戻し請求権を持つことになります。
論点Ⅰ:会社法612条には、「払戻しを受ける事が“できる”」となっている。では、払戻しを受けない事も可能か?
例えば、家族経営のような合同会社の場合、わざわざ払戻しを受けず、そのまま会社に資金をプールしておきたいという考えがあります。
その場合、死亡した社員の持分に関して、払戻しを受けないという事は出来るのかどうかについてですが、私が直面した会社の管轄する法務局に照会を行ってみましたところ、出来るという回答を得ました。
つまりは、相続人全員で払戻し請求権をもっているが、それを行使しないという状態もありうるという事です。
そうやって請求権を持ち続けて、10年経過し時効消滅をさせるというものです。
そのようなやや裏ワザ的な?方法がある事は、とても驚きでした。ただ、もし途中で相続人の一人が払戻しを受けたいと言い出したらややこしい事になります。
以上、今回はややマニアックな合同会社の社員が死亡した場合の取扱について記載してみました。
色々と相続人にしてみるとややこしい話が出てくること必死なので、
やはりきちっと後継者にバトンタッチしておく事が、迷惑をかけない大事な事だと思います。
事故等の不慮の場合には、やむを得ませんので、その時は定款の規定を確認し、しかるべき対応を検討してみてください。