年間497本目(月間 89本目) 
2025年公開 邦画 49位 鑑賞全作品 63本中
通算 邦画 10,095本  洋画 7,719本 合計 17,814本

 

深夜ドラマでお馴染みのコンテンツを映画化した本作だが、結論から言えば、原作のスピリットを根底から破壊してしまった、テレビドラマ以下の上滑りした失敗作である。

プロのカメラが捉えた、テレビを凌駕する映像美

本作において唯一評価できるのは、完全にプロの仕事であるカメラワークだ。テレビドラマを明らかに凌駕する外国の風景と、料理の撮影技術はまさに圧巻の一言。スクリーンに耐えうる本物の映画のルックだけは、見事に画面に定着させている。

「美味しんぼ」は求めていない──小市民の喜びの完全喪失

しかし、画(ルック)が超一流であればあるほど、やっているお話(ドラマ)の「しょーもなさ」がより一層浮き彫りになる。今回の海外放浪もののストーリーは、ただただ退屈である。

そもそも『孤独のグルメ』の面白さの核心とは、高級食材を愛でることではない。知らないローカルの地味な大衆食堂に入り、自分の勘だけでランチを見つけ出してこそであり、誰にも邪魔されずにささやかで低価格な料理を喜ぶあの「小市民性」と「行き当たりばったり感」にこそ、唯一無二の魅力があったはずだ。

それなのに本作は、フランスや韓国を舞台に「秘密のスープのレシピを探し求める」という壮大な大風呂敷を広げてしまった。これは『孤独のグルメ』ではなく、山岡士郎が究極の味を追い求める『美味しんぼ』の領域である。

高級な謎解きや義務的な海外放浪という色気を出した結果、一番大切な「大衆食の冒険」という作品の魂をドブに捨て、テレビドラマよりも面白くない出来のドラマに堕ちてしまった。

カメラの技術がどれだけ卓越していても、脚本とドラマの核が死んでいれば映画としては機能しない。テレビのサイズを勘違いし、都合のいい記号に逃げ込んだだけの、非常にガッカリさせられる一本であった。